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第五百一話 新たな証人

「……ア……アルス隊長……か……」


 ロンバルドの呻くような声に、シェスターもかすれ声で応じた。


「……ですが……アルスはエル様によって記憶を書き換えられたはず……」


「……ああ、そのはずだが……」


 ロンバルドは言いつつ、証人席へと向かうアルスをじっと見つめた。


「……あまり変わってないな、六年前と……」


「……ええ、場所がここでなければ懐かしむところですがね」


 アルスは証人席に立つと、被告席に座るロンバルドたちを見つめた。


 そしてなにやら感慨深げに微笑むと、軽く会釈をしたのだった。


 ロンバルドたちは若干驚きながらも、儀礼上返さぬわけにもいかず、同じように会釈をして返したのだった。


 するとアルスは満足げに再度微笑み、今度は意を決したような険しい顔となって裁判官席へと向き直った。


 そしてゆっくりと静かに法の番人たちに向かって頭を下げたのだった。


「証人。まずはあなたの姓名を教えてください」


 裁判長の求めに、アルスは明朗な声で応えた。


「わたしはセムガ村のアルスと申します。かつてローエングリン教皇国第七軍団に所属し、ゴルコス将軍の身辺を警護する親衛隊の隊長を努めておりました」


「……なるほど……親衛隊の……そうですか……」


 裁判長は目を細めてアルスの顔を眺めた。


 それはさもアルスの人となりを己の眼力でもって見定めようとしているようであった。


 すると、横から検事正のコッホルが手を高らかに上げつつ、大きな声を上げた。


「裁判長!アルス氏に関する資料、及びアルス氏の証言を元にした新たなる訴状を提出致したいと思います」


 すると裁判長は顔を若干伏せて少しの間考え込んだものの、すぐに顔を上げてコッホルの提案を受け入れたのであった。


「……認めます。こちらへ提出してください」


 裁判長の許しを得たコッホルは、喜び勇んで裁判官席へと駆け寄ると、手に持った少々分厚い書類を裁判長へと直接手渡した。


 すると裁判長は書類を手に取る際、思いのほか書類が多かったためか、ほんのわずか顔をしかめた。


 しかしながら今更受け取りを拒否するわけにもいかず、渋い顔をしつつも受け取ったのであった。


「……どうやらかなり分量があるようですので再度休廷したいと思います。ですがその前に……検察側に申し伝えておきますが、これより後は新たな証人やそれにまつわる新資料の提出等は控えてください。もしまだ他にあるということであれば今、その全てを提出してください」


「申し訳ございません。これで全てであります」


「そうですか。それならば結構ですが、今法廷は通常と異なり特別な事情によって弁護士不在でありながら半ば強制的に開かれた裁判であることを忘れぬように。今法廷は出来る限り遅滞なく進行し、本日中に結審まで行く予定です。ですのでこれ以上、裁判が遅れることのないよう十分注意してください。よろしいですね?」


 裁判長の厳しい言葉に、コッホルを筆頭に検事たちは皆非常に恐縮した態度で平身低頭した。


 すると裁判長は渋い顔はそのまま、検事たちを睥睨したのだった。


「それと、この書類と同じものを被告人にも渡すように。よろしいですね?では休廷とします」


 裁判長は手に持った木槌を力一杯振り下ろすと、すぐさますっくと立ち上がって他の裁判官たちと共に静かに退室していったのであった。

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