第四百七十六話 呼び出し
1
「……オルテスさん、大変失礼なことを申し上げました。どうかお許し下さい……」
シェスターは深々と頭を下げてオルテスに謝罪した。
「……い、いや、口止めされていたとはいえ、俺もあまりうまく説明できなかったから不審がったのは当然だと思うし……」
オルテスが慌てて両手を振ってシェスターの謝罪を受け入れた。
するとシェスターがほっと一息、安堵の表情を見せた。
「そう言っていただけると助かります」
シェスターは数歩歩み出てオルテスに対して右手を差し出した。
するとオルテスがその右手をがっしりと掴み、ここに両者の和解が成立したのだった。
これを一番喜んだのが傍らのロンバルドであった。
「いや~良かった。良かった。本当に一時はどうなることかと思ったぞ?」
ロンバルドはシェスターに対していたずらっぽくウインクをした。
「はい。副長官にはご心配をおかけしました」
「いや、実は俺も本当のところは腑に落ちてはいなかったんでな。だがそれにしてもガイウスの魔力総量が無限だったとは……」
「……ええ、ただ敵はエル様を……倒したかどうかは判りませんが、今もってなお音沙汰なしの状態にすることの出来る者です。過信は禁物かと……」
「無論だ。エル様に続いてガイウスまでもなんてことには絶対にさせんぞ!」
ロンバルドは決然とそう言い放つと、眦を決して中空を睨みつけるのであった。
2
「失礼いたします。シュナイダー副長官、シェスター審議官。ミュラー長官がお呼びです」
秘書のコーデシアが普段とは打って変わったかしこまった様子で告げた。
その様子から、ロンバルドたちは長官室からの連絡自体が緊張を孕むものであったことをすぐさま察したのだった。
「わかった。すぐ行くとお伝えしてくれ」
コーデシアはロンバルドの明快な返事に一礼すると、すぐさま取って返して静かに退室したのだった。
「……来ましたかね?」
シェスターの問いにロンバルドが立ち上がって答えた。
「おそらくな」
「……しかしまだガイウス君は到着していませんが……と言ってもこればっかりは仕方がないですね……」
「ああ……急ごう。長官をお待たせするわけにも行くまい……」
ロンバルドの求めにシェスターが勢いよく立ち上がって応えた。
「ええ、そうですね。行くとしましょう……我らの戦場へ……」
シェスターの覚悟の言葉にロンバルドは強くうなずいた。
「行こう。六年の……いや十二年の長きに渡った忌まわしき奇縁の終止符を打たんがために!」
ロンバルドは固い決意を胸に、一歩前へと足を踏み出すのであった。




