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第四百二十四話 竜の涙

「……せ……いや……えっ?……嘘だろ?……」


 ガイウスは、あまりにも予想外なカルミスの答えに言葉を失った。


「……嘘ではない……」


 カルミスは小さな声ではあったが、はっきりと断言した。


 しかしガイウスには到底信じられることではなかった。


「……いや……だけど……あんな小さな子供が千年竜って……信じられるかよ……」


「……信じないならそれでわたしは一向に構わないが……」


「……いや、そういうわけじゃないが……そんなにすぐに信じられることじゃない……ていうか理解できることじゃないだろ?……」


「……まあたしかにな……」


「……だが本当なんだな?嘘偽りはないんだな?」


「……ああ……」


 そこでガイウスは伏し目がちに腕を組み、突如部屋の中をうろつきだした。


 ガイウスは部屋の中を何往復もしながらブツブツと呟き、しきりに頭の中を整理しようと試みていた。


 そしてついに考えがまとまったのかふと立ち止まり、カルミスに対して質問しだした。


「ならばあのエスタ戦役における千年竜出現は、お前たちが仕組んだものということだな?」


「……ああ……」


 カルミスは完全に観念しているらしく、あっさりとその事実を認めた。


「だがどうやって……あっ!もしかしてあの玉か?……」


 するとそんなガイウスの発言にカルミスが驚愕の表情を見せた。


「……玉?ま、まさかお前!……あっ……いや……」


 カルミスは途端に押し黙った。


 するとガイウスが畳み掛けるように言葉を連ねた。


「そうだ!玉だ!レノンの執務室にあったあの玉で千年竜を操ったってことか!……はは~ん、道理で大人しくペラペラと白状したと思ったら、あの玉がなければどうせ俺には何も出来やしないとタカをくくっていたってことか、そうだろ?」


「……くっ!まさかあれがお前の手元に渡っているとは……」


「偶然だけどな。玉もあの子も俺の手の内だ」


「……なんということだ……もはやこれまでか……」


「ああ今度こそ本当に観念するんだな?」


「……くっ……」


 カルミスはさも悔しそうにその薄い唇を噛み締めた。


「それで、どうやってあの玉で操るんだ?」


「……それはいまだに確立してはいない」


「どういう意味だ?」


「あの玉……我々は竜の涙と呼んでいるが、あれが千年竜を制御するアイテムであることは間違いない。だが……いまだ完全にはコントロールできてはいないのだ」


「竜の涙ね……またずいぶんとロマンティックな名称で」


「別段わたしが付けたわけではない」


「あっそ。でもまあそんなことはどうでもいいや。それより……その竜の涙ってそもそもなんなの?」


「……さあ、わたしはそこまでは知らん……」


「ほんとかね~まだなにか隠しているんじゃないの?」


「……もはや隠す気力など失せたわ……あれらがお前の手元に揃っているのではな……」


 カルミスはそう力なく言い終えると、一つ大きなため息を吐き、がくんと頭を垂れてうなだれるのであった。

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