第四百三話 得手不得手
膨大な量のエネルギー波を放出し続けるメノンティウスと、同じく膨大な量のオーラを放出し続けるガイウスとの激突は、突然に呆気なくその終わりの時を迎えた。
ガイウスの身体がメノンティウスのエネルギー波の圧力に耐え切れなくなって、突如として後方に勢いよく吹き飛んだのである。
その勢いのほどは凄まじく、エネルギー波に乗ってあっという間に後方百Mは吹き飛び、ガイウスの身体が岩場のくぼみに落ち込んだことだことでようやく止まることが出来たほどであった。
メノンティウスは、ガイウスの体が自らの視界から消えたことを確認すると、ようやくエネルギー波の放出を止めたのだった。
すると上空に難を逃れていたシグナスがすーっと降りてきて、メノンティウスの隣にすっと並んで声をかけた。
「さすがだな?」
するとメノンティウスは再びぼんやりとしたおだやかな発光体へと戻り、静かな口調でもって答えたのであった。
「ふむ。久々ではあったが、どうやらまだなまってはおらんようだ」
メノンティウスはそう言うと満足気に含み笑いを漏らした。
すると突然、シグナスが前方を見晴るかしてハッとした顔つきとなり、さも忌々しそうに大きな舌打ちをした。
「ちぃっ!ガイウス・シュナイダーめ!」
見ると、遥か百M先の岩場の影から、ガイウスがひょっこりと身体を起こして立ち上がっていた。
するとそれを見たメノンティウスが思わず感嘆の声を上げたのだった。
「おお!中々に早い立ち直りだな。どうやら大してダメージは負っていないらしいな」
メノンティウスの言うとおり、ガイウスはすっくと起き上がると大して肩の凝る年齢ではないにも関わらず、首をコキコキと左右に振って、いかにも俺はダメージなんか全く負っていないぞアピールをしていたのだった。
「ふん!あんなのはただ痩せ我慢をしているだけにすぎん」
シグナスが鼻を鳴らしてガイウスの行動を嘲笑った。
「さもありなん。だが少なくとも直ぐに立ち上がるだけの余力はあるということだ。シグナスよ、お前ならばわしのエネルギー波を喰らって直ぐに立ち上がることが出来るか?」
「……それは……」
「無理であろう?ならば少なくとも奴の実力はお前よりも上だということだ」
するとシグナスはあからさまに嫌な顔をしてメノンティウスに対して反論を試みた。
「確かにわしよりも奴の方が戦いに関しては上であることは認めよう。だがそもそもわしの真価は戦いではないのだ」
「わかっておる。わしが言いたいのは、お前にはお前の、わしにはわしの得手不得手というものがあり、成すべき事柄もまたそれぞれ違うということだ」
「……つまりは……黙って戦いを見ていろということか?」
「とりあえずはな。だがもし仮にわしが危なくなったらば、その時は加勢してもらおうか」
「……一人では勝てぬと?」
「あくまで仮の話じゃ。十中八九はわしが勝つ。だが勝負は時の運なのでな。そうなった時はお前が戦いの鍵を握ることになるかもしれん。時の運とは刻一刻と移り変わっていくものなのだからな」
メノンティウスはそう言うと再び強く全身を発光させはじめた。
シグナスはそれを見て慌てて上空に飛び上がって避難した。
メノンティウスとガイウス。
両者の対決は、まもなく第二ラウンドのゴングが打ち鳴らされようとしていた。




