第四百二話 エネルギー波
「なあお前ら、まさかこれで全力ってことはないよな?」
ガイウスの軽口にシグナスは躍起となった。
次々に強力な電光迅雷を繰り出しては、ガイウスを執拗に責め立てた。
しかし、全ての電光迅雷はガイウスの周囲に湧き出す噴水のようなオーラによって吸収されてしまった。
するとそれを見たメノンティウスが感嘆のため息を漏らした。
「……素晴らしい……実に素晴らしいではないか……」
「感心しておる場合ではないぞ!メノンティウス!」
「……わかっておる。そう慌てるな」
「わかっておらん。出し惜しみするなと言ったのはそちらなのだぞ?」
「……仕方がない。今しばらく見ておきたかったがな」
メノンティウスはそう静かに呟くと、発していたぼんやりとした光を徐々に強く発光させ始め、と同時にゆっくりとした間隔で明滅させ始めたのであった。
発光は次第にその明滅の間隔を短くしていくと、ついには一つの巨大で強い光となって周囲を激しく照らしたのであった。
「……くっ!」
シグナスはそのあまりの眩しさに思わず電光迅雷を繰り出す手を止め、右手を自らの顔の前にかざしてメノンティウスの放つ発光を遮ろうとした。
「……ぐっ!……なんと!……」
だがメノンティウスの発光はあまりにも強烈なものであり、かざした右手だけでは到底追いつかず、シグナスはさらに左手をもかざして光から逃れようとした。
すると、今や光り輝く球体となったメノンティウスの全身から、突如として巨大にして膨大なエネルギー波が空気を切り裂くような爆音を伴ってガイウス目掛けて勢いよく放出された。
エネルギー波は直径一M半ほどのメノンティウスの発光体とほぼ同じ太さで、さながら巨大ダムから放流される毎秒数トンもの瀑流の如き勢いでもってたちまちガイウスへと襲いかかり、ついにそれは激しく激突した。
その瞬間、途轍もない爆発音が周囲に鳴り響いた。
と同時にガイウスの足元の荒涼とした岩場は激しく破砕され、その岩の欠片が大小様々に周囲に勢いよく飛び散ったのだった。
「……ぐっ!……なんという!……くそっ!」
シグナスは次から次へと飛んでくる岩の欠片を遥か上空に飛び上がることによって避けると、両者の激突を上空から見下ろした。
するとメノンティウスのエネルギー波はガイウスの足元の岩場だけでは飽き足らず、その途中の岩場をも激しく抉り取って半円の道を形作っていたのだった。
シグナスは、そのあまりにも強烈なメノンティウスのエネルギー波に驚くと同時に、両者の激突の行方を思い、呟きを漏らすのであった。
「……どちらだ!?……これは……一体どちらが勝つというのだ!?……」




