第三十四話 決着
「クラリスは生来の病弱であった。だからこの風光明媚なエルムールは療養に良いと思い、当地への赴任を決めたのだ。だが赴任した当初こそ体調がよく、パーティーなどにも出席していたのだが――」
「ああ、たぶんその頃だね、僕と会ったのは。もっともクラリスは全然覚えていないみたいだけどね」
クラリスはツンとした表情のまま、小首をちょっと傾げてガイウスに無言の挨拶をした。
「そして次第にふさぎ込むことが多くなり、終いには一日中ベッドで生活をすることも多くなった。そんな時に、驚くべき報告が入った。あの双子の片割れが、どうやら生きているらしいと、な。そこでカリウスに相談したところ、悪魔召喚をすすめられたのだ」
「ふん、相っ変わらず古いしきたりだの、言い伝えだのに縛られた連中だねえ。あんたらダロス人は!」
「…………」
「まあいいさ。ともかくこの子はすぐにも医者に診せること!」
カルラはクラリスを指差し、シュトラウスに強い口調で命じた。
「そして、あのユリアって子には今後一切なにがあろうが手を出さない!約束できるね?」
「はい。約束いたします」
「よし!ではこれにて一件落着!ガイウス、ロデムルいいね!?」
「えっ!?あ、あの、このままでいいのですか?」
「いいさ!そもそもの一番の原因はカリウスだ。だから奴を魔法協会に引き渡す。後は協会が判断して、処分を下すさ。お前さん、ジェイドにそうするように伝えておくれ」
カルラは、クラリス付きのメイドに向かって言った。
メイドは一瞬、クラリスのそばを離れていいものか迷ったものの、当の彼女が目配せでジェイドの元へ行くよう合図を送ったため、そそくさと部屋を後にした。
「シュトラウス!今回の一件、お前の行為は不問に付す。ただし!ちょいと役立ってもらいたいことがある」
「はい、なんでしょうか?」
「なあに大したことじゃあない。あたしらがダロス国内で自由に動き回れるよう、色々と便宜を図ってもらいたいのさ。あんた公爵なんだ、出来るだろ?」
「そんなことでよろしいのでしたら、いくらでも致しますが」
そこで突然、ガイウスが大声で叫んだ。
「ちょっとまって!僕の聞き間違いじゃなければ、今、あたしらって言いませんでした?あのー、あたしらのらって誰のことでしょうか?」
「そんなのガイウスとロデムル!お前たち二人に決まっているだろう!」
「なっ!そんないきなり!」
「問答無用!ガイウス、お前の修行は偽書の調査がてら、ダロスで行うこととする!別にあたしゃエルムールでするなんて約束はしちゃいないんだ。文句は誰にも言わせないよ!」
ガイウスは開いた口がふさがらず、ただただ呆然とした表情で立ち尽くした。
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