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第三十一話 偽書

「ふん!さっきから小声でべちゃくちゃとうるさいね!」


 カルラは長い思索の時を終えると、再びガイウスたちに向かって小言を繰り出した。


「男のおしゃべりはみっともないって教わらなかったのかい?静かにしな!」


 ガイウスたちはまたも大いにたじろぎ、さっと口をつぐんで静かになった。


 カルラはその様子を見て満足したのか、鼻を一つふんと鳴らすと再びカリウスへと向き直った。


「ところでお前さん、なぜに悪魔を呼び出したんだい?悪魔召喚が重罪だってことを知らなかった訳ではあるまい?」


「……は、はい……」


 カリウスのカルラに対しての怯えは尋常でなく、なかなか言葉にならなかった。


「……なぜだと聞いている」


 カルラは少々いらつき気味に催促した。


 するとカリウスはその気配を察したのか、あわてて喋りだした。


「そ、その……他に方法が見当たらず……それで……」


「……悪魔を制御できると本当に思っていたのかい?」


「は、はい。最下級の悪魔ならば人身御供を差し出すことで誰でも制御できると、あの魔導書に……」


「……ああ。やっぱりかい……」


 カルラはそこで一つ大きなため息を吐いた。


「……あのなあ、あの魔導書は偽書なんだよ」


「ぎ、偽書!?」


「ああそうさね。あの魔導書はね、お前以上にろくでもないある魔導師が書いた、偽書なんだよ」


 そこでガイウスはたまらずカルラに問いかけた。


「あの、ろくでもない魔導師というのは?」


「昔いたのさ。とんでもないのがね……そいつが悪意を込めて書いたのがあの魔導書さ」


「悪意……どういう意味でしょう?」


「どうもこうもないさ。さっきみたいな状況が生まれるように嘘八百を書き連ねたのさ。つまり……悪戯(いたずら)目的ってことさ」


「悪戯!?悪戯って言いますけど、先ほどの場合あなたがいたから良かったものの、そうでなければどれだけの死者が出ていたかわかりませんよ?」


「そうさね。大量に人死(ひとじに)が出ていたろうね」


 ガイウスはカルラの言葉に眉根を寄せた。


「ひど過ぎませんか?」


「だからろくでもない奴だと言っているだろう?」


「ろくでもないにも程がありますよ」


「そうさね。だが元々は偉大な魔導師だったんだよ」


 ガイウスは驚き、一段声が大きくなった。


「偉大な魔導師!?そんな奴がですか?」


「ああ、だがその後色々あってな。ろくでもない奴になっちまったのさ」


「色々というのは?」


「……色々は色々さ。それにしても困ったことになった。偽書はすべて焼き払ったはずだったのだが……」


 ガイウスは話しを少しはぐらかされたと思ったものの、聞いたところで答えまいと思い、構わず話を続けた。


「……なのに残っていた」


「ああ。一冊残っていたなら他にも残っているかも知れん。ならば……」


「入手ルートを(さかのぼ)って調査する必要がありますね」


「ああそうだな……というわけじゃ、いつ、テーベのどこで、どのようにして手に入れたのか詳しく聞かせてもらおうか?」


 カルラに眼光鋭く射すくめられ、カリウスはまたも震え上がることとなった。

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