第二千八百九十五話 醜悪な想像
そこでガイウスが、エラルダの不愉快そうな表情に気付いた。
ガイウスは斜め上を見て、なにやら思案した後、言った。
「悪魔召還のやり方なんだが――人身御供を使うのか?」
エラルダの眉間の皺が深くなった。
「そう聞いております」
「犠牲者は、若い女か?」
ガイウスの問いに、エラルダが首肯した。
「そのようです。何十人もの若い女を犠牲にして、悪魔召還をしているとの噂でございます」
ガイウスはその醜悪な場面を想像し、舌打ちをした。
「ちっ!胸糞悪い。とはいえ、まだ噂か」
エラルダは面を上げて答える。
「よろしければ、詳細に調査をいたしましょうか?」
ガイウスは大いにうなずいた。
「ああ、よろしく頼む。今後の鍵はユラシアが握っている。いや、ユラシアの新王と、あとはベルク王だな」
「ベルク王に関しましては、申し訳ございませんが、何も新たな情報はありません」
「やはりそうか。どうも各国ともにベルク王に関しては、まったく情報が入って来ないらしい。何処かに雲隠れでもしているらしい」
するとここまでずっと聞き役に徹していたローグ王が言った。
「もしや、ベルク王はユラシアにいるということはないか?」
ガイウスがため息を吐いて、肩をすくめた。
「あるんじゃない。ていうか、俺はその線が濃厚だと思っている」
「やはりか」
「動きがとにかく速い上に、好戦的だ。初めはベルク相手の合従軍を画策し、次いでユラシアの南下。たぶん裏で糸を引いているのはベルク王だろう」
「それにしても、ユラシアもフットワークが軽すぎないか?」
「そうだな。超大国といわれるユラシアにしては、動きが軽率過ぎる気もする」
「ベルク王の策だとしても、ユラシアの新王は何故その策をこうも簡単に受け入れたのかが、大いに謎だ」
「う~ん、確かになあ。両脇の国々と紛争状態だっていうのに、さらに南下するなんて、本来正気の沙汰じゃないからなあ」
ガイウスはそこで腕を組んでうんうんと唸りながら考え込んだ。
と、エラルダが恐縮しながら言った。
「申し訳ございません。そろそろ五か国連合の会合に向かいませんと……」
ガイウスは忘れていたとばかりに、顔の前で手をパンと叩いた。
「そうだった。一番大きな会議室でやるんだったっけ?」
ガイウスの問いに、エラルダが首を垂れながら答えた。
「はい。さようでございます」
「よし、じゃあ早速行こう。続きの話はその席でするとしよう」
ガイウスはそう言うと、ローグ王と顔を見合わせ、部屋を出るため歩き出した。




