第二千八百四十一話 蒼黒い膜
ガイウスの周囲を覆う蒼い膜を見て、レーラが光に包まれながら少し腹立たし気に言った。
「ここまで来ただけはあるようですわね」
ガイウスはそれを聞き、得意げに笑みを浮かべた。
「まあね。で、次はどうする?」
このガイウスの言い方に、レーラは業腹となったのか、途端に光量をさらに上げた。
ガイウスはあまりのまぶしさに一瞬目を閉じるも、すぐに両手をかざして影を作った。
「こいつは凄いな。でもこれも……」
ガイウスはそう呟くように言うと、再び自らの周りを覆う魔力を操作し始めた。
「よっと……これを……こうして……」
すると蒼い膜が少しだけ黒ずんできた。
「よし……いいぞ。もっと……」
ガイウスはさらに魔力を操作し、ついに幕を蒼黒くした。
そしてゆっくりと翳していた両手を下げたのだった。
レーラはこれにさらに腹を立てた。
そしてさらに光に熱を帯びさせ、ガイウスを襲った。
だが蒼黒い膜に覆われたガイウスは平然とした顔であった。
レーラはそれを見て、歯ぎしりをした。
「くっ!よくも……それなら」
レーラは放つ光を揺らめかせた。
光が波を打ってガイウスに迫る。
すると光に当たって蒼黒い膜が揺らめいた。
膜はゆっくりと波打ち、中のガイウスに影響を及ぼしはじめた。
「うん?……なんだ?……視界が揺らいでいる……気持ち悪いな」
ガイウスは思わず顔をしかめた。
だがそれだけでは終わらなかった。
膜が揺らめき、中の空気も揺れ、ガイウスの身体にまで影響が出てきた。
「ちっ!……気持ちの悪い攻撃しやがって……」
ガイウスは魔力再び操作し、膜が揺れないように工夫するも、それはなかなか上手くいかなかった。
ガイウスは先ほどのように操作が出来ないことに、かなりイライラしだした。
だがその間も、具合は悪くなる一方であった。
そしてついにガイウスは吐き気をもよおしてしまった。
「ぐっ……ぶっ……」
ガイウスは吐瀉物を吐き出し、膜の中に嫌なにおいが立ち込めた。
そのことでさらに具合が悪化し、さらに吐き出す羽目となった。
「げぇ……ぐふ……」
ガイウスは頭がふらふらとなりながら、まばゆく輝く発光体を睨みつけた。
「くそっ!ふざけた真似をしやがって……」
ガイウスは腹立たし気にそう言うと、再び魔力操作に取り掛かるのであった。