第二千八百三十六話 キャロル
キャロルは再び奥歯で歯ぎしりをした。
「生意気な口を……いいだろう。エルネスへのお仕置きは後にして、まずは貴様を叩きのめしてやるとしよう」
ガイウスは思わず肩をすぼめた。
「おいおい、エルネスにお仕置きするつもりか?」
「お前には関係ない。とっとと死ね」
「物騒だねえ。そんなことじゃモテないぜ?」
ガイウスが嫌味たっぷりな口調でそう言うと、キャロルはこの日最大の大きな音で歯ぎしりをした。
「貴様、ただでは殺さん。一万片の肉塊にして、下界にばら撒いてやる!」
キャロルは言うや、両手を前に突き出した。
そして突き出した両手から火花を激しく散らしたかと思うと、高熱源エネルギーをガイウスめがけてぶっ放した。
凄まじいスピードで高熱源エネルギーが襲い掛かる。
だがガイウスはそれを右手から瞬時に発出した高熱源エネルギーで受け止めた。
「なっ!」
キャロルは驚いた。
だがすぐに気を持ち直すや、高熱源エネルギーの出力を上げた。
「生意気なっ!」
キャロルの繰り出す高熱源エネルギーは、先ほどよりも一回り太くなってガイウスへと襲い掛かった。
だがガイウスはそれをやはり同じように高熱源エネルギーを一回り太くして受けきった。
「ぐっ!……貴様……」
キャロルは腹に据えかねたように低くくぐもった声でつぶやいた。
そして全身の力を両腕に込めるかの如くに、高熱源エネルギーを最大出力にして放出した。
「ぐおおおぉぉぉぉーーーーーーーー!」
キャロルが咆哮を上げて、高熱源エネルギーを放つ。
だがガイウスは余裕の表情のまま、それを受けきったのだった。
「今のが最大出力か?だったら俺の勝ちだな」
ガイウスがふふんと笑いながら勝ち誇って言った。
キャロルは鼻血を出し、額に青筋を浮き上がらせながら吠えた。
「許さんぞ貴様っ!このわたしを侮辱しおってーー!」
キャロルは最大出力と思われた先ほどの攻撃を上回る威力の高熱源エネルギーを発出した。
ガイウスはさすがに笑みを抑え、それを迎え撃った。
両者の中央で凄まじいまでの火花が宙に舞う。
それによって壁や床、それに天井までもが火花で黒く焼け焦げていく。
「ぐぶっ!」
キャロルが限界を迎え、口から血を吐き出した。
だがキャロルはまだ諦めずに高熱源エネルギーを放出し続ける。
「ぐっ!まだだ……まだ……」
キャロルは必死に高熱源エネルギーを繰り出すも、もはや結果は火を見るよりも明らかだった。
高熱源エネルギーは徐々にその威力を弱め、ついにキャロルは床に膝をついてしまうのであった。