第二千八百三十四話 鋭い声
エルネスの後に続いてガイウスが部屋を出た。
するとそこには螺旋階段が鎮座していた。
「先輩たちはこの上にいるのか?」
ガイウスの問いにエルネスが答えた。
「はい。そうです」
「わかった。行こう」
ガイウスがそう言うと、エルネスがうなずきながら歩を進めた。
そして一段一段階段を上っていった。
その途中、ガイウスが再びエルネスに話しかけた。
「ところで、その先輩たちってお前より強いのか?」
エルネスは振り向かずにあっさりと答えた。
「はい。強いです」
「お前が歯が立たないくらいに?」
「はい。相手になりませんね」
「あっそ、そいつは骨が折れそうだ……」
ガイウスがため息交じりにそう言うと、エルネスが階上にたどり着いた。
「こちらです」
ガイウスは少しだけ気合を入れうなずいた。
するとエルネスがドアを開き、中へと入って行った。
ガイウスはその後ろから覗き込むように中を見た。
そこは廊下であった。
その先にはまた新たな螺旋階段が見える。
だがその廊下の途中には、いくつもの扉がついていた。
「あれか……」
ガイウスがそう呟いた途端、ひとつの部屋の中から声が轟いた。
「何者だっ!」
その声は厳しい声音で、責め立てるような鋭さがあった。
ガイウスは思わず首をすくめた。
だが前を行くエルネスは動じず、声の主に向かって返答した。
「エルネスです」
すると鋭い声の持ち主はすかさず問い返した。
「それはわかっている!わたしが問うているのは、もう一人の方だ!」
ガイウスは思わず驚いた。
廊下を除いている風でもないのに、気配だけで察するとは思わなかったためだった。
エルネスは軽くガイウスを見やると、小首をかしげた。
「貴方の名前って聞きましたっけ?」
ガイウスは思い返してみた。
「あ~、そう言えば言ってなかったような」
ガイウスはそう言うと、改めて自己紹介した。
「俺はガイウス=シュナイダー。またの名をアウグロスという」
エルネスは小首をかしげた。
「どっちの名前で呼んだらいいんですか?」
ガイウスはすかさず答えた。
「ああ、ガイウスって呼んでくれ」
エルネスがうなずき、改めて声の主に対して答えようとすると、その前に扉がバンッと勢いよく開かれたのだった。