第二千八百三十二話 質問
エルネスはガイウスの答えを聞いて、軽く笑った。
そしてゆっくり静かに上半身を起こそうとした。
「おい、大丈夫か。まだ寝ていてもいいぞ」
ガイウスが心配そうに声をかけた。
「いえ、もう大丈夫です」
エルネスはそう言うと、しっかりと上半身を起こし、言ったのだった。
「貴方は一体何者なのですか?わたしの技を真似するや、いきなり凌駕してしまうとは只者とは思えませんが」
するとガイウスが得意満面の笑みを見せた。
「そうだろう~?俺はちょっと特別なんだよ。まあ、いわゆる天才って奴?まあ大体の技は、ちょっと見たらすぐに真似できるんだよねえ~」
エルネスはくすりと笑った。
「そうですか。どうやら貴方は相当な強者のようですが、おだてには弱いらしいですね」
するとガイウスの頬がぴくついた。
「……いや、まあ……それは、否めないかなあ……」
ガイウスは素直に認めた。
エルネスはさらに笑った。
「どうやら調子には乗っても、一応それなりに自重は出来るようですね」
ガイウスは口をへの字に曲げて言った。
「まあな……一応今まで、それで結構痛い目に遭ってきたもんでね……まあ色んな人に叱られもしたし、多少は自重できるようにはなったような……」
ガイウスはそう言うと、さらに口を歪めた。
エルネスはそれを見てさらに笑うも、しばらくして笑みを収めて言ったのだった。
「それで、貴方の目的はなんなんですか?ここに何の用があるのですか?」
エルネスの問いに、ガイウスが肩をすぼめた。
「いや、だから神様に会いにきたって言ったろ?」
「神様に会って、どうするつもりなのですか?」
「どうするって……話をするだけだよ」
「どんな話をされるつもりなのですか?」
矢継ぎ早の質問に、ガイウスは辟易しつつも答えた。
「だからそれはさっき言ったろ?下界で事件があって、それにここの神様が関与している可能性があるから、そのことについて話をしに来たんだよ」
「そうですか……」
エルネスはそれだけ言うと、顔を伏せて少しばかり黙り込んだ。
だがすぐに顔を上げると、言ったのだった。
「わかりました。ではご案内いたします」
ガイウスは驚きつつ言った。
「おおー!それは助かる。是非ともそうしてくれるとありがたい」
エルネスはうなずくも、厳しい表情で言ったのだった。
「ですが、そのためには貴方にやっていただくことがあります」