第二千八百二十七話 掃除
「やばっ!」
ガイウスは慌ててバリアーを二枚、三枚と次々に展開していった。
だが展開しているそばから、エルネスの高熱源エネルギーがバリアーを破っていった。
ガイウスはもはや無駄口を叩いている暇もなくどんどんバリアーを展開し、それをエルネスが破り続けるという状況がしばらく続いた。
するとついにエルネスが高熱源エネルギーを放出するのを止めた。
エルネスは深く大きなため息を吐くと、言った。
「いい加減にしてくれませんか?」
ガイウスはほっと息を吐きながら答えた。
「それはこっちの台詞だよ」
「わたしには次の仕事が待っているのですが……」
「次の仕事?なんだよそれ?」
「掃除ですよ。この神殿の掃除をしなければならないのです」
ガイウスは口をへの字に曲げた。
「掃除するから早く死んでくれってことか?」
エルネスは当然のように言った。
「ええ、そうです」
ガイウスはあきれ顔となった。
「そうですじゃないって」
エルネスは首を傾げた。
ガイウスはその様子を見て、深いため息を吐いた。
「おいおい、人の心はないのかよ……」
ガイウスはそこまで言って気づいた。
「そうか、お前人間じゃないのか」
するとエルネスが口を開いた。
「当然ですね。わたしが人間の訳ないでしょう」
ガイウスはうなずき、さらに問いかけた。
「だが神じゃないんだろう?」
エルネスは眉根を寄せて不快な表情を現した。
「何度も同じことを言わせないでください。わたし如きが神様の訳ないでしょう」
「じゃあお前は何なんだ」
エルネスは顎をツンと上げて言った。
「わたし?さあ?」
ガイウスは片眉をピンと跳ね上げた。
「あ?さあなって何なんだよ」
「さあはさあですよ」
「なんだそれは。お前、自分が何者かわからないのか?」
「わからない。神様からは何も言われてませんから」
ガイウスは眉をひそめた。
「……何も言われてない……自分で聞けばいいじゃないか」
「必要ないでしょう。わたしが何者であるかなど、どうでもいいことですからね」
ガイウスはさらに大きく眉をひそめた。
「どうでもいいことじゃないだろうよ。自分が何者かは生きていくうえで重要だろうよ」
だがエルネスには響かなかった。
「いいえ、そんなことは重要ではないので。本当に重要なのは、この後わたしは掃除をしなければならないということです」