第二千八百二十六話 審判
「いいえ、死んでもらいます」
エルネスは言うや、高熱源エネルギーを再び放出した。
空気を斬り裂き、高熱源エネルギーがガイウスに迫る。
ガイウスの前面に展開するバリアーがそれを防ぐ。
凄まじい火花が飛び散り、ガイウスはエルネスの顔が見えないほどであった。
「参ったね」
ガイウスはバリアーが高熱源エネルギーによって少しずつ解け始めているのを見て、思わずつぶやいた。
「ま、展開しまくればいいだけのことさ」
ガイウスは言うや、目の前のバリアーを二重にした。
すると、途端に最初のバリアーをエルネスの高熱源エネルギーが突き破った。
「怖っ!」
ガイウスはさらにもう一枚バリアーを前面に展開した。
するとすぐに二枚目のバリアーが破られた。
ガイウスはため息を一つ吐くと、一気に二枚バリアーを展開した。
「なかなかに凄いな。これだけの高出力で撃ち続けるなんてのは」
ガイウスはエルネスに対し感心しながらも、自分がやられるわけにもいかないとばかりに、次々とバリアーを展開していった。
すると、それまで無言で高熱源エネルギーを放出し続けていたエルネスが口を開いた。
「しつこいですね。そろそろ諦めたらどうですか?」
ガイウスはバリアーを展開しながら答えた。
「諦めるわけないでしょ。そんなことをしたら死んじゃうじゃん」
「ええ。わたしはそれをこそ望んでいるのですが」
「俺は望んじゃいないっての。あんたこそ俺を殺すのを諦めたらどうだ?」
「それは出来ません。貴方は罪を犯した。それ故罰を与えなければなりません」
「強情だねえ。だいたいさ、仮に俺が罪を犯したとしてだよ、なんであんたが罰を下すんだよ。その前に普通は裁判するだろ?」
「裁判?そんなものは必要ありません」
「いや、それはちょっと独善的すぎやしませんかねえ?」
「わたしは神に仕える者です。それくらいの判断は出来ますので」
「いやいやいやいや、そんな勝手に審判を下しちゃまずいでしょ」
「そんなことないと言っていますが?」
「そうはいっても、やっぱまずいっしょ。神様に判断を委ねたらどうよ?」
するとエルネスが眉間に深いしわを寄せた。
「そのような煩わしいことに神様を巻き込むわけには参りません。貴方はここで、このわたしが処分いたします」
エルネスはそう言い捨てるとやおら左手も上げ、新たにもう一本、高熱源エネルギーを放出するのであった。