第二千八百二十五話 高熱源エネルギー
「そうですか。では……」
エルネスはさっさと片付けようとばかりに、右腕を前に差し出した。
すると開いた右手の手のひらから、高熱源のエネルギーが充満しだした。
高熱源エネルギーはバチバチと火花を散らしながら凝縮し続け、今か今かと放出の時を待っているようだった。
「お時間です」
エルネスがそう言った途端、右手の高熱源エネルギーがレーザービームのように一直線に発射された。
無論その標的はガイウスであり、ほんのわずかの誤差もなく、その眉間に向かって突き進んだ。
だが……。
高熱源エネルギーがガイウスの眉間にヒットするかと思われた瞬間、ゆらっと蜃気楼のように揺らめいた。
エネルギーは凄まじい勢いでガイウスの残像を突き抜け、後ろの壁に穴をあけた。
だがエルネスは特に驚くでもなく、無表情であった。
「……なかなかやりますね」
エルネスがそう呟くと、先ほど蜃気楼の中で消え失せたガイウスが別の場所に姿を現した。
「そうだろ?これでも戦闘経験はあるほうでね」
ガイウスは得意満面といった表情でエルネスに向かって言った。
エルネスはそれでも無表情を貫き、言ったのだった。
「そうですか。ですが、二度は通じません」
「まじで?」
「ええ。貴方は恐らく亜空間に逃げ込んだのでしょうが、もうそれは出来ません」
ガイウスは肩をすぼめて問いかけた。
「なんで出来ないんだ?」
「亜空間を現出させないようにこの空間を閉じ込めましたから」
ガイウスは眉をしかめた。
「まじで?そんなことできるの?」
「嘘だと思うのでしたら、やってみたらどうですか?」
エルネスの言葉に従い、ガイウスは亜空間を開こうとした。
だがそれは叶わなかった。
「……どうやら本当みたいだな」
エルネスは無表情で答えた。
「当然です。では、今度こそこれでおしまいです」
エルネスは右手を構えるや、すかさず高熱源エネルギーを放出した。
高熱源エネルギーが火花を散らしながら、凄まじい勢いでガイウスに迫る。
だがそれは、ガイウスには当たらなかった。
何故ならば、ガイウスの前面に展開されたバリアーによって防がれたからであった。
それを見て、エルネスが始めて眉間にしわを寄せた。
「……早く終わらせたいのですがね」
するとガイウスが、バリアーのその向こうでにやりと笑った。
「そう言われてもなあ、こっちも死にたくないのでね」




