第二千八百二十話 言い訳
「い、いや、それは……」
ガイウスはほとほと困り果てた。
だが汚名は返上したい。
その一心から、ガイウスはさらなる抗弁をするのであった。
「いや、確かに言い訳の余地はないと言いつつ、言い訳を言った。ごめん。でも少しだけ話を聞いてくれないかな?」
すると女性は腕を組みつつ、うなずいた。
「わかりました。いいですよ」
ガイウスは喜び勇んで抗弁を始めた。
「ありがとう。いや、実はね、下界で事件が起こってね。それでまあその事件に神様が関与しているんじゃないかと思って、ここまで上がってきたんだよ」
すると女性が眉をひそめた。
「下界の事件に神様が関与?何を言っているのですか、貴方は?」
ガイウスは息せき切ってさらにつづけた。
「いや、話せば長いことなんだけど、ある賢者が突如として行方不明になったんだ。それでしばらくしたら、俺の夢の中にその賢者が出てきたんだよ。それで、そいつが言うには囚われたんだって言うわけよ。で、詳しく話を聞いてみると、そんな真似が出来そうなのは神様くらいしかいないだろうと思ってね。で、こんな高いところまで飛んできたってわけなのさ」
すると女性が大いに首を傾げた。
「その賢者とやらを捕らえるメリットって何かあるんですか?」
すると今度はガイウスが首をかしげる番となった。
「メリット?」
「ええ。メリットがなければわざわざそんなことしないでしょ?だからそんなものがあるのだったら教えてもらおうと思って」
ガイウスは眉根を寄せて口を尖らせた。
「いや~、それがわかれば世話がないというか……わからないからここへ来たっていうか……」
「煮え切らないですね?」
「いや、だって神様が何を考えているかなんてわかりようがないでしょ。だからそれも含めて聞きに来たってわけ」
「わけもわからず神様を尋ねに来る人がいますか?」
「ここにいますけど」
すると女性が相当に怪しんだ表情をして言った。
「いないと思いますよ。あなたの魂胆はどうせ下着ドロボーだろうし」
ガイウスは膝から崩れ落ちそうになるのを必死にこらえ、魂魄の籠った叫びをあげたのだった。
「だから違うって言っているだろーーーーーーーーーーーーーーーー!」
だが女性は驚くでもなく、くすりと笑うのでもなく、無表情で言ったのだった。
「そう言われても状況証拠が揃ってますからねえ」