第二千八百十六話 頂上
ガイウスは霊峰アルピザンの頂上に降り立つや、辺りを見回した。
「まったくもって何もないな。それに空気が薄い。でもまあいい景色だから気分はいいな」
ガイウスはしばし上空一万Ⅿの景色を楽しんだ。
だがすぐに思い直した。
「いや、俺いつも空飛んでるし、見ようと思えばいつでも見えるし」
ガイウスは自分に突っ込みを入れると、もう一度頂上の様子を探った。
「う~ん、やっぱり何もない……」
ガイウスはそこで真上を見上げた。
「いるとしたら、この上かな?」
ガイウスはふわりと浮き上がると、上を見上げながらゆっくりと静かに上昇していった。
「ちっ!さらに空気が薄いな……」
ガイウスは薄い空気に辟易しながらも、さらに上昇を続けた。
すると、視界の先に何か黒いものが見えてきた。
「お!ビンゴ!なにかあるぜ……あれは、建物か……丸く黒い建物……いや、違うな太陽の陰で黒く見えているだけだ……」
ガイウスはさらに上昇を続けた。
「よし、あと少し……あと少しで……」
だがよほど空気が薄いらしく、意識が少し遠のきかけた。
そのためガイウスは速度を落とし、急上昇するのを止めた。
そしてゆっくりと天空の建物へと近づいて行ったのだった。
「はあ……きつい……はあ……」
ガイウスは苦しそうに呼吸をしながらゆっくりと丸い底をした建物へと迫った。
「はあ……やっぱりだ……はあ……はあ……白い……はあ……建物だ……はあ」
ガイウスは建物にかなり近づくや、確信して言った。
だが息は相当に荒い。
すでに限界近くにまでなっていた。
「くっ!……はあ……はあ……あと……はあ……はあ……少し……はあ」
ガイウスはすでにめまいを起こし、意識が飛びそうになっている。
だが必死に意識をとどめようと努力して、さらに上昇した。
するとついに、建物の底へとたどり着いたのだった。
「よし……はあ……はあ……はあ……着いた……はあ……はあ……はあ……入り口……はあ」
ガイウスは建物の入り口を探すも、見当たらない。
ゆっくりと辺りを見回すも、やはりどこにもなかった。
「はあ……ない……はあ……はあ」
ガイウスは仕方なく横滑りするように飛んだ。
そして巨大な丸い底から抜け出て、建物の側面に出たのだった。
「……はあ……はあ……あった……はあ」
ガイウスは死にそうな表情でようやくそれだけつぶやいたのであった。