第二千八百十五話 霊峰アルピザン
ガイウスは丁寧にセロに礼を告げると、すぐに教会をあとにした。
そして建物の外に出るや、近くの係員をつかまえて聞いた。
「西の方角はどちらでしょうか?」
係員はすぐに笑顔で指さしてくれた。
「ああ、あちらですよ」
ガイウスが指の先を見るも、何も見えなかった。
「くもってるから見えないな」
すると係員がガイウスの言葉に気が付いた。
「もしかして霊峰アルピザンを見ようと思われたのですか?」
ガイウスはすかさずうなずいた。
「ええ、そうなんですよ。この辺からでも晴れた日だったら見えると聞いたのですが、この天気じゃ見えませんね」
係員は笑みを浮かべた。
「ええ、さすがにこれでは見えませんね。さぞ残念でしょう。実に綺麗な円錐形をしているのですがね」
「ほう、そうですか。歩いていったらどれくらいかかりますかね?」
「そうですねえ、天気のいい日はここから見えるとはいっても、遠いですからねえ、半日はかかってしまうんじゃないでしょうか」
「ああ、半日ですか」
「ええ、霊峰アルピザンは一万Ⅿ越えの高峰ですから、見えたとしてもだいぶ遠いんですよ」
「わかりました。ありがとうございます」
ガイウスは丁寧に礼を言うと、教会の敷地を出て行った。
そして手近に姿を隠せるところを見つけるや、そこに入り込んでふわっと浮き上がった。
ガイウスはそのまま一気に上昇すると、西の方角目掛けて爆発的に飛んでいくのであった。
「おお、あれか……一万Ⅿ越えって言っていたけど、凄い迫力だな。しかも周りに他の山はないし、綺麗な円錐型をしているし、霊峰と呼ばれるのも当然だな」
ガイウスは雲の上を跳んで視界を確保すると、遥か彼方の霊峰アルピザンを見つめ、その高貴な姿に感嘆の声を上げた。
そしてその頂上を見つめたのだった。
「……何もないな。何か祀る社みたいなものがあるかと思ったが……ここから見る限りはまったくないな」
ガイウスは超高速で霊峰アルピザンに近づきながら、その中腹辺りを見た。
「う~ん、やっぱり何もない。もしかして入山禁止にしているのかな?これだけの高峰だと、登山者がいる場合は休憩するための小屋みたいなものがありそうだけど、それがないということは、入っちゃいけないようになっているんだろう」
ガイウスはそう判断すると、頂上目掛けて飛行するのであった。