第二千八百十三話 拮抗
「では、この三神は三すくみの状態だということですか?」
ガイウスの問いに、セロが大いにうなずいた。
「そのようです。三神は互いに協力することもありますが、けん制し合うこともあったということです。つまりはその時その時、適宜話し合い、対立したり協力したりしたと伝わっております」
ガイウスはうんうんとセロの話を聞きながら何度もうなずいた。
「なるほど……ただその中で中央のダラム神は主神とされているのですよね?」
セロはまたも大いにうなずいた。
「ええ。そうですね」
「ですが、力は拮抗しているのですよね?しかも時に対立したということは、デグロス神を制御できていなかったように思えるのですが……」
「そうですね。制御出来ているかと言われれば、出来ていないと言わざるを得ませんね」
「それなのに主神というのは、どうしてなのでしょうか?」
セロは微笑を湛えながら答えた。
「もう一人の神、エール神がほとんどの場合、ダラム神に従ったからだと言われております」
ガイウスは納得顔で何度もうなずいた。
「な~るほど~、なら対立した場合も、二対一ってわけですか」
「そのようです」
だがそこでガイウスがわずかに首をひねった。
「でもそうなると、ダラム神側が有利なんじゃないですか?二対一なわけですし、拮抗しているとは言えないのでは?」
するとセロが首を横に振った。
「いえ、多くの場合、エール神はダラム神を支持しますが、対立は決して好まないのです。なのでいざ戦うとなればエール神は引きこもってしまいます。なので拮抗した形になるのです」
「は~、つまり意見としては二対一の構造になるけど、いざ対立するとなるとエール神は引きこもるため、ダラム神とデグロス神の一対一になってしまう。そのため拮抗した形になってしまうということですか」
セロは大いにうなずいた。
「その通りです」
ガイウスはまたもうんうんとうなずきながら、さらなる質問をした。
「確か、エール神は女神なのですよね?」
するとセロが首を横に振った。
「いいえ、女神でもなければ男神でもないようです」
ガイウスは老神父の話を思い出した。
「ああ、そうか。確か……一般的には女神とされているけれど、そうじゃないと解釈する方たちもいると……」
セロはうなずき、言った。
「ええ。わたしはその少数派の支持者でして、わたしはエール神は両性具有だと思っております」