第二千八百八話 老神父
「ありのままか……ありのまま……」
ガイウスは老神父の言葉をかみしめるように二度繰り返した。
だが疑問が生じたため、口を開いた。
「解釈をしないということは……その、考えないというのと同じなんでしょうか?」
すると神父が大いにうなずいた。
「そうです。ただ感じるのみです」
「感じる……はあ……」
神父はにっこりと微笑んだ。
ガイウスはひとまず神父の考え方は置いておき、そもそもの目的について問いかけることとした。
「ちなみにこの三神は皆善神なのでしょうか?」
すると神父は少し考え、口を開いた。
「善神ですか……そうですね。一般的には二柱は善神と思われておりますが、もう一柱は悪神と思われているようです」
ガイウスがハッとなった。
「一柱は悪神なんですね?」
すると神父が笑った。
「そういう解釈が一般的なようです」
ガイウスは大いにうなずいた。
「なるほど。神父は解釈はしないので、あくまで一般的な話としては、一柱は悪神であると言われているということですね?」
「そのようですな」
「ちなみに一柱は女神ですか?」
すると神父がまた少し考えてから答えた。
「そうですなあ、そういう解釈が一般的なようです。ですが、そうでないという解釈もあるようです」
「そうでない……ということは男神だと」
「いえ、どちらでもないとい解釈なようです」
「どちらでもない……そうですか……」
ガイウスはうんうんとうなずきながらつぶやくように言った。
そして再び口を開いた。
「いろいろな解釈があるんですね?」
神父は大いにうなずいた。
「そのようですな」
ガイウスはうなずき納得すると、別の質問をした。
「ちなみにこの三柱は同格なのでしょうか?それともこの中央に鎮座する神が主神となるのでしょうか?」
「そうですねえ、わたしは先ほどより解釈はしないと申し上げておりますが、これについてははっきりと申し送りがありまして」
「申し送り……それは代々この教会の神父となられた方に伝わるということでしょうか?」
神父は大いにうなずいた。
「そうです。わたしが今から三十年前、引き継ぎました時に前の神父に言われました」
ガイウスは口を挟まず、神父が話すのを待った。
すると神父はにっこりと微笑み、言ったのだった。
「中央の神こそが主神であると」