第二千八百七話 教会
ガイウスは教会内に足を踏み入れるや、感嘆の声を上げた。
「おお!なかなかに凄いな。かなり豪華な造りだぜ」
ガイウスは教会内のたくさんの彫像を、眺め見ながら建物の壁際を歩いた。
「いろいろあるな……」
ガイウスが言うように、彫像はさまざまな神をかたどっていた。
「多神教であることは間違いないな」
ガイウスはそう断定した。
そして今度は建物の中央にある祭壇へと向かった。
祭壇にも数種類の彫像が立っていた。
ガイウスは近づくと、少しだけ首を傾げた。
「建物の周囲にある彫像とは別のものなのかな?」
ガイウスは祭壇の彫像をくまなく観察すると、再び壁際へと移動した。
そして祭壇の彫像と違うのかどうかを確認するため、周囲の彫像を丹念に見比べた。
「う~ん、どうやら別らしいな。周囲の彫像は、全部で十種類……祭壇の彫像は三種類か」
ガイウスは再び建物中央の祭壇へと向かった。
そして三体の彫像を見比べた。
「二柱は男神。人柱は女神か」
ガイウスはそう呟くと、背後から話しかけられた。
「もし?何をされておる?」
ガイウスは振り向き、答えた。
「彫像を見ているんですけど、ちょっと近づきすぎましたか?」
すると神父らしき恰好をした老人が笑みを浮かべた。
「ああ、いや、そうでしたか。これは失礼いたしました」
老神父は微笑みながらガイウスへと近づいた。
「どうも最近物騒なものでな。つい声をかけてしまいました」
「と仰ると、まさか盗難とかがあるとか?」
「ええ、そうなんです。いや、幸いこの教会は被害を受けておりませんが、隣町ではいろいろと盗まれたようです」
「そうだったんですか。それはそれは……ところで神父、この三柱の神は、どのような神なのでしょうか?」
すると神父がさらに笑みを深めた。
「興味がおありか」
「ええ、ちょっと気になりまして」
「そうですか。実はこの三神は元々は一柱の神だったようです」
「一柱?では三神に分かれたということですか?」
「はい。心の中で仲たがいをした結果、三神に分かれたと伝わっております」
「心の中で……それって多重人格みたいなものでしょうか?」
すると神父がにこやかに笑った。
「さあ、そう解釈する者もおるようです」
「と仰ると、貴方は違うわけですね?」
すると神父が首を横に振った。
「いえいえ、わたしは解釈をしないだけです。ただありのままの姿を受け入れるのみです」