第二千八百四話 応答なし
「よし!五分後だ。さあ、集中してくれ。今度こそロキューズと連絡を取るんだ」
意気揚々とアルマスが言った。
ガイウスは眉根を寄せた。
「もう五分も経ったか?そんなに時間経ってないと思うぞ?」
だがアルマスは確信を持って言い切った。
「いいや、もう完全に五分経っている。さあ、早く」
急かすアルマスに、ガイウスが仕方なしに磐座の上に寝転び、瞼を閉じた。
「わかったよ、もう……」
そしてまたも意識を集中させて、ロキューズに呼びかけたのだった。
ロキューズ……返事をしてくれ……ロキューズ……。
だがやはり返事はなかった。
ガイウスはおもむろに瞼を開いた。
するとアルマスがパーッと明るい顔をして、勢い込んでガイウスに問いかけた。
「連絡が取れたんだな!?」
ガイウスは頬を軽くひきつらせた。
「え、いや……取れなかったよ」
するとアルマスがすかさず速射砲のようにべらべらと文句を連ねた。
「ちょっと待てよ。あんな短い時間で何がわかるんだ?あんな短時間じゃロキューズに届きっこないじゃないか!一体何をしているんだよ。もっと真剣に呼びかけてくれよ。さあ、早く!」
アルマスに急かされ、ガイウスは仕方なく瞼を閉じた。
そして嫌々意識を集中させたのだった。
ロキューズ……なあ、おい……ロキューズよ……。
応答はない。
おい、ロキューズ……いい加減に応答しろよ……なあ、ロキューズ……本当に聞こえていないのか?……。
ガイウスはかなり長めにロキューズに呼びかけた。
だがやはりなしのつぶてであった。
ガイウスはあきらめ、ゆっくりと瞼を開こうとした。
だが目のあたりがピクリと動いた瞬間、じっとガイウスを凝視していたアルマスが瞬時に気づき、反応した。
「おい!連絡が取れたのか?まさか、またこんな短時間で諦めたんじゃないだろうな?」
ガイウスは開きかけた瞼を思わず閉じた。
そして面倒だと思いながらも、もう少しねばってみようと試みた。
ロキューズ……なあ、応答してくれよ。なあロキューズ……でないと俺、困るんだけど……。
だが応答はない。
ガイウスは心の中でため息を一つ吐くと、もう一度ロキューズに語り掛けた。
ロキューズ……起きろって……応答しろって……なあ、おいロキューズ……ダメか?やっぱりだめなのか?
ガイウスはそこで、アルマスの反応を見るため、軽く瞼を動かしてみた。
すると案の定、アルマスが瞬時に言ったのだった。
「おい、まだ早いぞ。もっと頑張ってくれ」
ガイウスはまたも心の中でため息を吐くと、もう一度ロキューズに語り掛けてみるのであった。