第二千八百三話 呼びかけ
「ほんと、面倒くさい奴……」
ガイウスは再びゆっくりと瞼を閉じて、ロキューズに呼びかけることに意識を集中させた。
静かに、ゆっくりと意識を集中させていく。
そうしてロキューズに呼びかける。
ロキューズ……ロキューズ……。
だが、応答はなかった。
それでもガイウスは、ロキューズを呼び続けた。
ロキューズ……ロキューズ……。
何度も何度も呼びかけるガイウス。
ロキューズ……返事をしてくれ、ロキューズ……。
だがやはりロキューズからの返信はなかった。
そのためガイウスはようやく呼びかけを諦め、うっすらと瞼を開いた。
すると、すかさずアルマスが息せき切ってガイウスに問いかけた。
「どうだった!?ロキューズから返事はあったのか?」
ガイウスは半目を開けたところですかさず急かすように問いかけられたため、思わず舌打ちをした。
「ちっ!うるさいなあ……」
「それで、どうだったんだ!?」
ガイウスは口元を軽く歪めると、言ったのだった。
「ダメだったよ」
するとアルマスががっくりと肩を落とした。
「ええ~……ダメか……」
アルマスがあまりにも残念そうだったため、ガイウスもさすがに同情的になった。
「まあ、なんだな……タイミングが悪かったのかもな。もしかして時間を置いたら、出来るかも……」
ガイウスがそう言うと、アルマスがものすごい勢いで言った。
「よしっ!じゃあ五分後にまたやってみよう。そうしたら大丈夫かもしれないからな」
「五分て……いくらなんでも早すぎないか?」
ガイウスが抗議の声を上げるも、アルマスは大きく首を横に振った。
「いいや、そんなことはない。もしかしたら五分後がベストなタイミングかもしれないだろ」
「いや、そんなことは……」
「言い切れるのか?絶対に五分後がベストなタイミングじゃないと断言できるのか?」
「そういうわけじゃないけど……」
「だろ?だから五分後だ。よし、そうとなったら休憩していてくれ」
アルマスはなにやらウキウキした様子であった。
そのためガイウスはあきれ顔となった。
「現金な奴だな……まあいいけどさ……」
ガイウスは思わずアルマスの言い分を認めた。
認めてしまった。
その結果、ガイウスはこの後、とんでもない目に遭ってしまうことになるのであった。