第二千八百二話 惰眠を貪る
「ちょっと呼びかけてみるか」
ガイウスがそう言うと、アルマスが嬉しそうに言った。
「よし、やってみてくれ」
「ここでか?」
アルマスはうなずいた。
「その磐座の上で寝転がればいい」
ガイウスは自らがすでに乗っている磐座の感触を改めて足の裏で感じ取った。
「いや、硬いよ……」
ガイウスがそう言うも、アルマスは譲らなかった。
「別にそれくらいいいだろう?」
「いや、でもなあ……」
「さあ、早く寝転がってくれ」
嫌がるガイウスをものともせず、アルマスは急かした。
ガイウスは仕方なさげに寝転がった。
「やっぱ硬いな……」
ガイウスが軽く愚痴をこぼすも、アルマスは気にも留めなかった。
「さあ、早く目をつぶって集中しろ」
ガイウスは軽くため息を吐くと、ゆっくりと目を瞑り、意識を集中させた。
「どうだ?呼び出せそうか?」
ガイウスは目を瞑ったまま、うるさそうに答えた。
「まだ始めたばかりだろ……」
ガイウスがあきれ声で言った。
だがアルマスはうきうきとしているらしく、さらに言った。
「まだか?まだ反応はないか?」
ここでガイウスがたまらず目を開いた。
「おい!いいかげんにしろよ、それじゃあ集中できないだろ!」
だがアルマスはやっぱり悪びれなかった。
「そうは言うが、わたしは心配なんだ。だいたいなんで今までこちらから呼びかけるなんて初歩的な手を使わなかったんだ?」
ガイウスは頬を引きつらせながら言った。
「いや、普通そうは思わないだろうが……」
「そんなことないだろ?普通すぐに思いつくぞ。実際わたしは思いついたし」
「うるさいな……ロキューズが出来たのは、あいつが賢者だからなんじゃないか?」
するとすかさずアルマスが反論した。
「ならお前は大魔導師じゃないか。ロキューズに出来てお前に出来ないことなんて、そんなにないんじゃないか?」
「いや、知らないけど……」
「まったく、困ったものだな。わたしに言われるまで気づかないとは……」
アルマスがそう言って両手を広げて肩をすぼめた。
ガイウスの頬はびくびくと引きつり、こめかみには怒りマークがくっきりと浮かび上がった。
「……あのなあ、お前何を勝ち誇ってんだよ。二百年もの間、惰眠を貪ってきた奴が、偉そうにしてんじゃないよ」
するとアルマスがふてくされた。
「悪かったね。惰眠を貪ってさ」