第二千八百一話 何もわからない
「本当か~?だって凄いお偉いさんなんだろ?」
ガイウスが懐疑的に首をかしげながら言った。
だがアルマスは淡々と答えた。
「そうだと思うぞ。よくは知らないがな」
「よくは知らないくせに、そうだと思うっておかしいだろう」
「そんなことを言われてもな。偉いさんだっていう認識はあるんだよ」
「そういう風に思わされているってことか?」
すると今度はアルマスが首をかしげた。
「……まあそうだな」
ガイウスは片眉を跳ね上げた。
「ふうん、怪しいな。そう思い込まされているだけの可能性があるな」
「かもしれないね」
「おい、お前のことだぜ?他人事みたいに言うなよ」
「そう言われてもねえ……わたしではそれは判断できないな」
「まあそうかもしれないけど……ところで十二使徒ってなんなんだ?」
「言ったろう?お前の守護者だよ」
「それは聞いたけどさ……十二使徒ってくらいなんだから、十二人いるんだろ?」
「だろうな」
「それも知らないのか?」
「そうだな。よくは知らない」
「本当になんにも知らないな」
「だから言ったろう?生まれてすぐにここに来て、捕まって二百年だからな」
ガイウスはそこでまたも片眉を跳ね上げた。
「だとすると、お前が十二使徒だってのも、本当は違ってもわからないよな?」
するとアルマスがあっさりと認めた。
「そうだな。わからないだろうな。なにせ判断材料がない」
ガイウスは肩をすぼめた。
「まったく、なんにもわからないんだな」
「そうだな」
これまた他人事のようにアルマスが言った。
ガイウスはあきれ顔で言った。
「まあいいさ。一応お前が俺の守護者であることを信じて、ロキューズを探すさ」
「ああ、出来るだけ早く頼むぞ」
「わかったよ」
だがそこでアルマスが首をひねった。
「ところで当てはあるのか?」
するとガイウスも首をひねった。
「……いやあ、ないな。なにせ何処にいるのか皆目見当もつかないし……」
「じゃあ何も出来ないじゃないか」
「俺に文句を言うなよ。こっちだって雲の子を掴む話なんだぜ」
「だがわたしはお前しか頼れない。何とかしてくれよ」
「だからわかったって。ただ、どうすりゃいいのか……」
「お前の方からロキューズを呼び出したりは出来ないのか?」
「俺の方から?」
ガイウスは腕を組んで考えた後、軽くうなずいたのだった。
「ちょっと呼びかけてみるか」