第二千七百九十九話 囚われの身
ガイウスは、途端に性急になったアルマスに対し、深い溜息を吐いた。
それをアルマスが目ざとく見とがめた。
「なんだ。そのため息は?」
「あん?お前に対して呆れただけだよ」
「なんで呆れるんだ?おかしいだろう」
「おかしくないさ。急に性急に解放しろーって言う方がおかしいだろう」
するとアルマスが不満げな顔をした。
「だから言ったろう。見込みが出てきたんだから、気持ちだって変わるさ。わたしはそれを言っているんだ」
ガイウスはさも面倒そうに言った。
「見込みなんてないも同然だろうが。だってロキューズが夢で語り掛けてきただけだぜ?何処にいるかもわからないのに、なんで見込みが出てきたんだよ」
「まったく何もないよりは見込みがあるだろう」
「ないね。今だ雲をつかむような話だ」
「そんなことはない。ロキューズと話が出来ただけ、前進だ」
するとガイウスが不満げに口を尖らせた。
「ああ言えばこう言う……面倒な奴だな」
「わたしは面倒な奴などではない。十二使徒の一人だぞ」
「だからなんなんだよ。そもそもその十二使徒ってなんなんだよ」
「言ったろう。君の守護者さ」
「守護者ねえ……全然守護してもらえてないんだが?」
ガイウスがまたもあきれ顔で言った。
アルマスは心外だとばかりに怒りをあらわにする。
「待ちたまえ。それはまだわたしが囚われの身だからだ。解放してくれれば大いに君の役に立つぞ」
ガイウスは肩をすくめた。
「本当かねえ。ちょっと信用できないんだが?」
アルマスは憤然と言った。
「そこは信用したまえ!天帝より、君の守護者たれと仰せつかった以上、わたしはその職務を全うするつもりだ」
「その天帝ってのもよくわからないんだが……」
するとアルマスが断言した。
「わたしもよくしらない」
ガイウスは思わずこけそうになった。
「お前、なんにも知らないじゃないかよ」
「そんなことはない。知っていることもある」
「そりゃそうだろうけどさ……肝心なことは何も知らないじゃないか」
するとアルマスがぶぜんとした表情で言ったのだった。
「仕方がないだろう。わたしも命を受けて地上に降り立ったところで、いきなり捕まってしまったんだから」
「仕方がないって言われてもな……なんでその天帝っていうのが助けにこないんだよ」
するとアルマスはすかさず首をひねったのだった。
「さあ?」