第二千七百九十八話 駄々っ子
アルマスの突っ込みに、ガイウスが慌てて答えた。
「ああ、俺は転生者だって言ったろ?この世界に転生する前の名前はガイウス=シュナイダーって言うんだよ」
するとアルマスがうなずいた。
「ああ、そういうことか。もしかしてそちらの名前の方が呼ばれ慣れているのか?」
ガイウスはうなずいた。
「そうだな。正直、アウグロスという名前には慣れていない。ガイウスの方がありがたいかな」
するとアルマスがあっさりと承知した。
「わかった。では今後はガイウスと呼ぶことにしよう」
「ああ、そうしてくれ」
するとそこでアルマスが軽く首を傾げた。
「ところで、どうした?わたしに何の用だ?」
「何の用って……ロキューズを見つけたらここに来いみたいなこと言ってなかったっけ?」
するとアルマスが驚いた表情となった。
「もう見つけたのか!こんなに早くにか?これは予想外だぞ」
ガイウスは慌てて否定した。
「いや、見つけたってわけじゃないんだ。ロキューズが夢に現れてな……」
「なんだ……連れてきてくれたわけじゃなかったのか……ぬか喜びさせるなよ」
「ああ、すまない。それで、ロキューズが夢で俺に語り掛けてきたんだよ」
「ほう、ただの夢じゃなさそうだな」
「ああ。ちゃんと会話したからな。寝ぼけていたわけじゃない。夢の中に現れたんだ」
「奴は今どこにいると?」
「わからない。だけど、何者かによって囚われていると言っていた」
「囚われていると?」
「ああ、そうだ。アルマス、何か心当たりはないか?」
アルマスは渋い表情をして考え込んだ。
だがすぐに首を横に振った。
「……いや、心当たりはないな」
ガイウスはがっかりした。
「そうか……ないか。アルマスに聞けば何かわかるかと思ったんだが……」
「う~ん、そう言われてもな……わたしはロキューズが誘導者だということだけしか知らないからな」
ガイウスは腕を組んで考え込んだ。
「そうか……となると、解決方法は今のところなさそうだなあ……」
するとアルマスが不機嫌そうに口を尖らせた。
「それは困る。わたしとしては早く解放してほしいのだが……」
「いや、一、二年くらいは待つって言ってなかったっけ?」
「言った」
「じゃあ少しくらい待ってくれよ」
するとアルマスが駄々っ子のようにすねた顔をして言ったのだった。
「嫌だ。初めはロキューズを探すのは雲の子を掴むような話だから待つって言ったんだ。だけど今の話を聞いたら、何とか出来るような気がしてきた。だから出来るだけ早く解決して、わたしを解放してくれ」