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第二百四十九話 岩肌

「うわっ!」


 自分の身体が突然落下するような感覚に襲われ、ガイウスは思わず大きな叫び声を上げた。


「ふむ。どうやら到着したようじゃな」


 エルの落ち着き払った言葉に、ガイウスは目を凝らして辺りを見回した。


 しかし周囲のあまりの暗さにガイウスの目は対応できず、辺りの様子をうかがい知ることは出来なかった。


「……だめだ……なんにも見えないよ……」


「ふむそうか。人間の目では見えんか……ではこれでどうじゃ?」


 エルはそう言うとナーガの背に手をつき、器用に二本足で立ち上がった。


 ガイウスはいきなり自分の目の前に立ち上がったエルに不安げに尋ねた。


「……なにするつもり?」


「まあ見ておれ」


 エルはそう言うと、両前足を前方にスッと突き出し、自らの鼻先でこすり合わせた。


 するとその前足の先から突然、凄まじい勢いの炎が吹き上がった。


 炎はうなりを上げて上昇したかと思うと、ある地点で突進を止め、後続の炎を吸収してどんどん大きく膨れ上がっていった。


「すっげー!これはまるで太陽じゃないか!」


 ガイウスの言う通り、炎は小さな太陽のように一点にとどまり、周囲を煌々と照らしていた。


「ほれどうじゃ、これで見えるようになったじゃろう?」


「ああ凄くよく見えるよ。見えるけど……巨大な空間に岩肌しか見えないんだけど……」


 ガイウスの眼前には高さ二百(メルクル)はあろうかという巨大な地下空間が果てしなく広がっていた。


 しかしその景色は雄大ではあっても、どこを見ても一面変わり映えのしない岩肌が延々とただ続いているだけであった。


「そりゃそうじゃろ。この辺にはまだ村はないからな。あるのは岩だけじゃよ」


「そうか……村はまだ先なのか」


「うむ。とはいってもあと十分もすれば着くがの」


「そりゃ良かった。それなら我慢できそうだ。それよりさ、こんな太陽みたいなものが作れるなら明かりの心配なんかいらないじゃないか」


 するとエルは溜息を吐きながら大きくかぶりを振った。


「馬鹿を言え。こんなもの、ものの十分もすれば消えてなくなるわい。かといって十分おきにこんなものを作っていたら、さすがのわしとて疲れてしまうわい」


「なんだそうなのか。それは残念…………あれっ?あそこに見える鳥居みたいなものは何?」


 ガイウスは彼らの行く手に見える、二本の大きな柱の上に突き出るような形で大きな横木を乗せ、その横木の下に平行にもう一本の横木を、今度は縦柱に対して収まるような形に嵌めた形状の真紅に染め上げられた人工の建造物を指差して言った。


「うん?トリイ……とはなんのことじゃ?」


「ああそうか、ごめんごめん。鳥居っていうのはあっちの世界で神様を祀る施設の入り口に置かれた門のようなものなんだけど……う~ん、見れば見るほどそっくりだなあ……」


 するとエルが目を大きく見開いた驚きの表情を浮かべた。


「……なんとっ!神の門とな……う~む……」


「どうしたのエル?」


 ガイウスがいぶかしそうに尋ねると、エルは眉根を寄せて重々しそうに語った。


「いやなに、あれはな、村の入り口を示す建物であると同時に、ナーガ族の神であるナーガラージャの通り道を示す意味合いがあるのじゃ……つまりは……神の門……というわけじゃよ」

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