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第百八十七話 出口

 1



「よし!ちょっと時間はかかったけど、これで全員だね」


 ガイウスはクラスメイトたち一人ずつを抱きかかえて飛び上がり、紅蓮の炎(バーフレイム)によって開けられた天井の大穴からドームの外へと全員を運び出したのだった。


 途中、ガイウスに抱きかかえられる恥ずかしさから、嫌がる女子が数名いたものの、各リーダーたちの説得により何とか無事に脱出することが出来た。


「ガイウス、この穴に飛び込めばいいのか?」


 マックスが恐る恐る地面に出来た大きな裂け目(クレバス)を覗き込んで言った。


「ああ、だがまず俺が行く。この裂け目(クレバス)の先が安全かどうか確認してくるよ」


「気をつけてな。まあお前の場合飛べることだし、問題ないと思うけどな」


「ああ、心配は要らない。すぐに戻ってくるよ」


 ガイウスは言うや、おもむろに裂け目(クレバス)へと飛び込んだ。


 それを見て女生徒たちから軽く悲鳴が上がったものの、ガイウスは気にせず、何食わぬ顔で穴の奥の暗闇に溶けていったのだった。



 2



「……長いな……」


 ガイウスが穴の中に飛び込んでから十秒ほどが経ったものの、ガイウスの身体は依然として暗闇の中を落下し続けていた。


 ガイウスは飛行出来ないクラスメイトたちの予行演習の意味合いで、自由落下にまかせていたのだが、突然にそれは終わりを迎えることとなった。


 ガイウスの足元から突然、眩いばかりの光が差し込んできたのだ。


「出口か!」


 ガイウスは叫んだ。


 と同時にガイウスの身体は暗闇を抜け出し、光に包まれた。


 すると次の瞬間、ガイウスの身体は大きな音を立てて、いきなり水中に没したのだった。


 ガイウスは予期しない出来事に慌てふためいた。


 しかも、あまりにも勢いよく水の中へ飛び込んだために、水が鼻の中へ入って鼻腔の奥にとてつもない激痛が走り、水中でガイウスは散々にのた打ち回った。


 さらに、いまだ水中に没しているという認識がないために、息を吸おうとして大量の水を一気に飲み込んでしまったために、ガイウスは苦しみもがいた。


 だがガイウスはそこでようやく自分が水の中に飛び込んだことに気付き、水面を目指して一目散に泳いだ。


 そしてガイウスはようやく水面の上に顔を出すと、そのままの勢いで飛び上がった。


 空中で息を整え、ようやく落ち着いたところでガイウスは初めて周囲を見回した。


 水が鼻に入ったことで目一杯に涙を溜めながらも、ガイウスは目を凝らして周りの景色を観察した。


 するとそこにはとても見覚えのある景色が広がっていたのだった。


「……くそっ!シグナスの奴!池に落ちるならそう言っておけよ!まったく!ああ、鼻が痛いったらありゃしない……それにしても……まさか自分の家の庭の池に出るとはね……やってくれるよ、まったく!」

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