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第十五話 捕囚

「うっ……うぅ……」


 低いうめき声を上げながらガイウスはようやく長い眠りから目を覚ました。


「……う…………いってぇ……」


 寝起きざまに首筋に強い鈍痛を覚えたガイウスは、首をさするため腕を動かそうと試みたが、「ガチャリ」という音がしただけで、彼の両手は思い通りには動いてはくれなかった。


「……手錠……」


 だがまだ彼の意識は混濁した状態であったため、なぜ彼が手錠に繋がれる羽目になったかを思い出せずにいた。


 そこで彼は意識をしっかり取り戻そうと、何度も激しく(まばた)きをしたり首を横に強く振ったりしながら、ゆっくりと身体を起こして周囲を見渡したが、そこにはまったく見覚えのない景色が広がっていた。


「……どこだ……ここは……」


 ガイウスはそこでようやくはっきりとした意識を取り戻した。


 そして後ろ手に手錠をはめられているため、ゆっくりとではあるがしっかりと立ち上がった。


 そして自らが今置かれている状況について考察することにした。


「……ここは……地下室か……だがどこの……」


 するとそこでガイウスは自らのもっとも新しい記憶を脳内から引き出すことに成功した。


「そうかっ!俺はあいつらに……」


 ガイウスはそう呟くと、悔しそうに唇を噛んだ。


 だが悔しがるよりも先に現状分析をする事の方が重要だと思い直し、すぐに考察を再開した。


「ということはここは……ダロス王国か?…………いや、いくらなんでもダロスは遠い……最低でも数週間はかかるはずだ。その間俺がずっと気絶していたとは考えづらい…………ならここは……」


 その時金属製の扉に備え付けられた小窓が、甲高い金属のこすれる音と共にゆっくりと開いた。


「どうやらお目覚めのようだな」


 小窓の奥から聞き覚えのある声が響いた。


「……まあね。あまりいい目覚めじゃなかったけどね」


「そうか。それはすまなかったな。これでも出来るだけ手加減したんだがな」


 ガイウスは改めて自らの敗北をその時の勝者によって思い起こされ、悔しさを(にじ)ませながら唇を噛んだ。


「ふむ。ずいぶんと悔しそうだな。そうしていると普通の子供のようだが……」


「……普通じゃなくて悪かったな」


「別に悪くはないさ。ただ不思議に思っているだけだ」


「……俺も不思議に思っていることがある……ここはどこだ?ダロスじゃないようだけど?」


「お前ならすぐに判るだろうさ」


「もう一つ。当然ユリアは無事なんだろうな?」


「ああ。心配には及ばない……今のところはな」


「今のところ?……どういう意味だ?ユリアはお前たちにとっては大事な道具だろ?あのクラリスって子の家となにかの取引に使うために誘拐したんだろ?なら最後まで大事に扱うんじゃないのか?」


「……それもいずれ判るだろう……ではな」


 言うや、リーダーは素早く小窓を閉めてしまった。


「おい!ちょっと待て!どういうことだ!?ユリアはなんのために誘拐されたんだ!?おいっ!聞いてんのかっ!?」


 だがリーダーは答えず、立ち去る足音だけが石造りの室内に硬質に響いた。


「くそっ!あの野郎……それにしてもユリア誘拐の動機は何なんだ?ユリアを誘拐してわざわざ殺す意味なんてないだろうし……だめだ。まったく判らない……」


 ガイウスは硬い石畳の床の上で、しばし煩悶(はんもん)するのだった。

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