第千四百四十四話 中産階級
「そうかねえ~?単に運が良かったとかじゃない?」
ガイウスが茶化すように言った。
だがシェスターは真面目な顔を崩さなかった。
「いや、彼は名家のででもないし、強力な後ろ盾があったわけでもない。運だけでは到底無理だったと思う」
「ふ~ん。苦労人なの?」
「そうだな。特に貧しかったわけではないらしいが、中産階級の出だったらしい」
「じゃあそんなに苦労人ってわけじゃないね?」
するとシェスターが首を横に振った。
「いや、苦労人のはずだ」
「そうなの?中産階級なのに?」
「ああ、中産階級ということは特別裕福ではないということだ」
「まあそうだろうね。何と言っても中産だからね。可もなく不可も無くってことでしょ?」
「そうだな。だがそれではローエングリン教皇国では不利となるのだ」
ガイウスは意外そうな表情となった。
「中産だと不利なの?なんで?」
「いや、別段中産だから不利というわけではない。無論貧しいのも不利だ」
するとガイウスが納得の表情となった。
「ああ、なるほどね。ローエングリン教皇国は、今現在裕福な者たちによって支配されているってことだね?」
「そうだ。今ローエングリンにおいて上に行こうと思えば、何らかの力が必要だ」
「な~るほど。多くは血縁、後は財力ってところか」
「ああ。だがカルビンはそれらをまったく持っていなかった。にもかかわらず彼はナンバー2まで上り詰めたのだ。只者ではないはずだ」
「ん~……そうかなあ?どうもそうとは思えないんだけど……」
するとカルラが横やりを入れた。
「まあいいさ。シェスターは、カルビンがそんなに気になるなら調べるといい。それはお前の得意とするところだろう?」
シェスターがニヤリと微笑んでうなずいた。
「はい。カルビンの人となりを徹底的に調査したいと思います」
「ああ。それとガイウスは……例の解読をすること。それに、特訓の続きをやるよ」
ガイウスは一瞬で頬を引き攣らせて白目を剥いた。
「……ごおぉぉぉぉ……また最悪の日々が始まるのか……」
ガイウスはこの世のものとも思えない呻き声を上げつつ嘆息した。
するとカルラがすっくと立ち上がった。
「じゃあ早速特訓を始めるかね」
ガイウスは驚愕の表情でもってカルラを押しとどめようとした。
「ちょっ!ちょっと待ってよ!今帰ってきたばかりじゃん!明日にしようよ~」
するとカルラがニヤリと微笑んだ。
「そうだな。今日のところは止めといてやるか。その代わり、解読の方をやることだね。特訓を免除してやる代わりだ。さっさと取りかかりな」
「はい!早速取りかかります!」
ガイウスは言うや、すかさず部屋を押っ取り刀で出て行くのであった。




