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第百四十二話 幼年期の終わり

 1



「すまんなシェスター、休みのところを」


 ロンバルドはシェスターに対して、急に呼び出しした事をまず詫びた。


「いえ、それは別に構いませんが……どうしたのです?せっかくご子息がお戻りになったというのに、何か問題でも?」


 シェスターは、ガイウスが久しぶりに帰国することを事前にロンバルドから聞かされていた。


 だからきっと今頃は、感動の親子の再会になっているのだろうと思っていたのだ。


 そこへ、突然の召集である。


 シェスターがいぶかしむのも当然のことといえた。


「うむ。実はな……どうやらダロスが大変なことになっているらしいのだ……」



 ロンバルドは、ガイウスたちから聞き及んだ事柄をつぶさにシェスターに説明した。



「……凄い話ですね。それは……」


 さすがに冷静沈着なシェスターも、ダロス王宮での事件の顛末には絶句せざるを得なかった。


「うむ。異常な事件といわざるをえんだろうな……」


「異常どころではありませんよ。もしその話が本当なら、ダロス王国は今現在、得体の知れない何者かによって乗っ取られているってことでしょう?」


「そうなるな……」


「だが、周りはそのことに気付いていない……」


「ああ、現時点ではな」


「いずれ気付きますかね?」


「ガイウスは、王宮に搬入されていた荷物が腐っていたと言っていた。そのことに誰かが気付けば、だが……」


「その前に、その何者かがそのことに気付き、荷物を撤去すれば……」


「ああ、ダロス王家の異変には誰も気付かないかも知れない」


「最悪ですな」


「ああ、最悪の事態だ」


 そこでシェスターはふと思い立ったように言った。


「首謀者は、カルラ様の兄弟弟子だという、そのシグナスという魔導師でしょうか?」


「わからん。それにこの事態に、バース村の生き残りが関係しているのかどうかもわからん」


「バース村消失事件とダロス王宮乗っ取り事件……この二つが無関係とは思えませんが……」


「ああ、関係あるだろう。だがどう関係しているのか想像すらも出来んのが現状だ」


 そこでロンバルドは一旦言葉を切り、おもむろに立ち上がった。


「シェスター、ダロスを調べてくれ。金はいくらかかっても構わん。ダロスの秘密を暴いてくれ」


「了解しました。では早速」


 言うやシェスターはロンバルドに一礼し、風のように素早く部屋を後にした。


 残されたロンバルドは、再びどっかと椅子に座り込み、大きなため息を一つ吐いた。


「エスタ紛争の次は、これか……まったく世界はどうにかしちまったのか……」


 そう言うと、ロンバルドはまた一つ大きなため息を吐くのだった。



 2



「まあそんなわけじゃし、お前さんの修行はこのわしが引き継ごうかの」


 そう言うとエルはいじわるそうな笑みを浮かべた。


 ガイウスはエルの言葉と顔つきに、半目となってほほをピクピクと引きつらせた。


「わしの修行はきびしいぞ~楽しみにしているがよい」


(いやな予感しかしない……絶対こいつサディスティックな性格だ……せっかくカルラの修行から逃れたってのに……いやもちろんカルラには還ってきてほしいが……いやだからといって厳しい修行はごめんだが……あああああああ、なんでこんなにつらい目にあわなきゃならないんだよおおおおおおお)


 ガイウスは内心で己の生まれ変わりの不幸を嘆いた。


「おいお前、内心の落胆がおもいっきり顔に出ておるぞ……」


 エルはガイウスのあまりにもな顔つきに、少々呆れ顔で突っ込みを入れた。


「よいか?一応言っておくが、お前さんたち転生者はこの世界の特異点なのじゃ。じゃから身も心も十分に鍛えておかねばならんのじゃ、じゃから諦めて修行に励むことじゃ」


「特異点?どういう意味?」


「いずれ判る。今はとにかく鍛えることじゃ。いつか来る分岐点に備えて……な」


 エルの言葉の意味をガイウスが理解するようになるのは、それから実に何年も経ってのことであった。

今話にて第一章幼年期が終了となります。

次話より第二章少年期が始まりますので、引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

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