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第十一章 神の棺

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第千四百三十三話 ご機嫌取り

「……そう、ルキフェルが……」


 イオーヌはそう呟くと、視線を落とした。


 ガイウスはその様子をつぶさに観察した。


(……確かに何処かで出会っているはずなんだけど……何処でなんだ?やっぱり前世か?……だろうな。おそらくまだ記憶の鍵が掛かっている部分なんだろう……となると、思い出せそうにないな……)


 ガイウスが思考に耽っていると、イオーヌがおもむろに顔を上げた。


「……部屋に戻るわ」


 イオーヌはそう言うと、皆の返事も聞かずにすかさずクルッと踵を返した。


 シェスターが少し慌て気味に呼び止めようと右手を上げるも、その手をカルラが押しとどめた。


 カルラは無言でシェスターと目配せし、イオーヌの好きにさせた。


 そのためイオーヌは、そのまま静かに退場したのであった。


 扉が閉まり、イオーヌが去ったのを確認すると、シェスターが静かな口調で問いかけた。


「よろしかったので?」


 カルラはゆっくりと静かにうなずいた。


「ああ。ひとまずはな」


「ひとまず……ですか」


「そうだ。イオーヌの記憶の鍵を握っているのはルキフェルで間違いないだろう。となればここで強引に何らかの手を打とうとしたところで、どうにもなるまい。ならばここは大人しくしていることさ」


「では、いずれ何らかの手を打つと?」


「そうだ。そのためにはイオーヌをこちら側に付けておく必要がある。今はイオーヌの機嫌を損ねないことだ」


「なるほど。しかし、イオーヌがこちら側に付くと思いますか?」


「それは判らん。だが、ルキフェルがわざわざガイウスとの邂逅を用意する相手だ。おそらく重要人物なのではないかな?」


「……そうですね。では精々ご機嫌取りに精を出さなければなりませんね?」


「なあに、そんなに気を遣うこともあるまい。それなりでいいだろう」


「それなり……ですか?」


「ああ、それなりで問題ないと思うぞ。なにせ、既にお前は相当に気に入られているからな」


「……わたしがですか?」


「ああ。それにおそらくはガイウスもだ」


 すると、予想外と言わんばかりの驚きの表情でガイウスが言った。


「俺?俺、彼女に気に入られている?うそ~ん」


「本当さ。少なくともわたしにはそう見えたね」


 ガイウスは眉根を寄せて深く考え込んだ。


「……本当かな?そうは思えないんだけど……」


 するとすかさずカルラが問うた。


「お前はどうなんだ?イオーヌをどう思うんだ?」


 突然のカルラの問いに、ガイウスがまたも予想外と言わんばかりの驚きの表情となって言ったのだった。


「……俺?……まあ、嫌いじゃないけど……まだ正直判らないよ……」

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