第千四百三十二話 記憶
「ルキフェルの当てが外れたってこと?」
ガイウスが信じられないといった表情となった。
だがカルラは確信を持っているような顔付きで断言した。
「ああ、そうさ」
「ん~、それはどうなんだろうね?」
半信半疑のガイウスに、カルラが問いかけた。
「ではお前自身はどうなんだ?イオーヌと会って、何を感じた?」
するとガイウスが嫌な表情となった。
「なに、また蒸し返す気?だから口説こうとしたんじゃないって。ていうかそこに持ってくるのが目的だったの?」
ジトーッとした目で睨むガイウスに対し、カルラが苦笑した。
「そうではない。お前はイオーヌとどこかで会っていると思った。だが、それだけだった」
「そうだよ。別に口説こうとしたんじゃないよ」
「ああ、判った判った。それはもういい。お前は微かにイオーヌを覚えていたが、イオーヌの方は覚えていなかった」
「それがルキフェルと何か関係があるって言うの?」
「たぶんな。本当は、二人は劇的な再会を果たすはずだったんじゃないかと思ってな」
するとそれまで静かに考え込んでいたシェスターが同意した。
「なるほど、そういうことですか。しかしだとすると、何故この場所をルキフェルは選んだんでしょうか?」
「さあな。そこまでは判らんし、場所はどうでもよかったのかもしれん」
「といいますと?」
「場所ではなく……時間。今この時に二人が出会うのが最も良いと思ったのかもしれんな」
「だがルキフェルの意図とは異なり、二人は特に何も感じなかった。わずかにガイウス君が覚えていたくらいで……」
カルラは大きくうなずいた。
「ああ、そんなところじゃないかな?」
するとシェスターが両腕を組んで再び深く考え込んだ。
そして腕をほどくと、思いついた考えを口にしたのだった。
「……ガイウス君とイオーヌには共通項があります。それは、記憶が無いことです」
カルラが大いにうなずいた。
「そうだな。ガイウスはほとんど記憶を取り戻したが、イオーヌはそうではないのだろう?」
カルラの問いに、イオーヌが静かにうなずいた。
「……ええ。子供の時の記憶がないわ。ごっそりとね。彼もそうなの?」
イオーヌの問いに、ガイウス自身が答えた。
「俺の場合は子供の頃の記憶ってわけじゃない。前世の記憶さ」
「ああ、そうなんだ。前世の……ね」
「そう。まあほとんど取り戻したけどね」
「ふうん……取り戻したっていうことは、奪った人がいるってことね?」
ガイウスは眉根を寄せて嫌そうな表情を作ると言ったのだった。
「ルキフェルさ。俺の前世の記憶に鍵を掛けていたのは、そのルキフェルなのさ」




