第千三百九十話 重大な告白
「ところで、他の二人はどうしているのかな?」
シェスターが、カルビン邸への道中、イオーヌに対して何気なく質問した。
イオーヌは事も無げに答えた。
「ここにはいないわ」
「それは見ればわかる。我々も馬鹿ではない。先程から周囲に気を配っているが、何の気配も感じられないのでな」
「ええ、だってこの近くにはいないもの」
「ふむ、ではカルビン邸にいるのか?」
するとイオーヌはシェスターの顔を見ず、ただ真っ直ぐ前を見据えて答えた。
「さあ、どうかしら?わたしは彼女たちが何時、何処で、何をしているかなんて常に把握しているわけではないもの」
「なるほどな。では質問を代えよう。君は三姉妹の長女か?」
するとイオーヌが少し考えてから答えた。
「……そうね。たぶんそうよ」
何やら曰くありげな物言いに、シェスターがいぶかしげな表情となった。
「たぶんとは、ずいぶんな言い回しだな?何を言い淀んでいるのだ?」
シェスターが挑発的に言った。
だがイオーヌは何食わぬ顔で、ただ前を見据えながら答えるのだった。
「別に言い淀んでいるわけじゃ無いのよ?そうね……わたしたちは少し変っているのよ」
「ほう、変っているとはどういう風にだね?」
シェスターの素早い追及ではあったが、イオーヌはどこ吹く風であった。
「言っても、貴方たちには判らないわ」
イオーヌはそう言うと、長く艶やかな髪を向かい風にたなびかせて軽やかに笑った。
シェスターはさらにいぶかしげな表情を浮かべながら、さらなる追及を試みた。
「それは聞いてみなければ判るまい。言ってみてくれ」
すると、ここでようやくイオーヌが、横に並んで歩くシェスターの顔をチラと見た。
「そう。確かにそうね。では教えるわ。わたしたちには幼き日の記憶がないのよ」
突然の重大告白に、シェスターたちは皆一様に驚きの表情を浮かべた。
「……わたしたちということは、三人ともということか?」
シェスターが落ち着きを取り戻して問いかけた。
するとイオーヌが、またも真正面をジッと見据えて歩きながら、静かに答えた。
「ええ、そうよ。三人ともよ」
シェスターは眉間に皺を寄せ、怪訝な表情となった。
「……それは何か……特殊な環境にいたとかかな?」
「特殊な環境?まあ、そうね。たぶんそうよ」
「ほう、そうなのか……それは一体どんな環境だったのだ?」
重ねて問いかけるシェスターに、イオーヌがまた振り向いた。
「判らないわ。だって記憶が無いんだもの」
朗らかに笑うイオーヌに、シェスターは心がざわめくような感情を思い起こされるのであった。




