第千三百八十八話 招待
変らず挑戦的な物言いのシェスターであったが、白いドレスの女は表情一つ変えなかった。
「判っているでしょ?貴方たちを招待しに来たのよ」
シェスターは軽く鼻を鳴らすと、さらに言った。
「カルビン卿のお誘いか?それとも君たち三姉妹のかな?」
美女は笑みをそのままにすかさず返答した。
「どちらもよ。カルビン卿も、わたしたちも貴方たちを歓迎するわ」
「ほう、ではやはり君たちは三姉妹なんだな?」
「ええ、そうよ。特に隠すつもりはないわ」
「そうか。まあそれはいい。それよりも、なぜ我らを招待するのだ?」
美女は口角をさらに上げ、笑みを深くした。
「判っているくせに。わざわざ聞くのは何故かしら?」
そこでシェスターが一瞬眉根を寄せた。
「……いや、我々はハッキリとは判っていないぞ?そもそも何故君たちが、アルス・オルテスの二人を攫ったのか、我々は理解していないからな」
シェスターがあえて自らの手の内を晒すようなことを言った。
だがそれは、あえて敵の手の内に飛び込もうというシェスターの考えであった。
そしてそれを、アジオたちは瞬時に理解した為、彼らは何も言わなかったのだった。
すると美女がゆっくりと顔を下げ、下から睨めつけるようにシェスターを見た。
そしてこれまでよりも低いトーンでもって言ったのだった。
「……そう……そうよね。あの二人……アルス・オルテスの二人ね……」
美女はそう呟くように言うと、今度は静かに顎を上げ、上から見下ろすようにシェスターたちを見た。
「あの二人を、何故わたしたちが誘惑したのか……そして……そこの二人も……ね」
美女はそう言って、コメットたちに向かって妖しくウインクをした。
するとコメットがドギマギとした仕草をし、バルトは忌々しそうに美女を睨み付けた。
それを見るや、美女は妖艶に左手で口元を覆いつつ、高らかに笑ったのだった。
するとコメットが、今度は恥ずかしそうにうつむき、バルトがさらに憎々しげに美女を睨んだ。
だがそこで、ついにシェスターが再び口を開いた。
「彼らをからかうのは止めて貰おう。君たちは何故、アルスたちを攫ったのだ?」
美女は笑うのを止め、シェスターと正対した。
そして、ゆっくりと口元を覆い隠していた左手を下ろした。
「それは……わたしたちの招待を受けてくれたら、お教えするわ。いかがかしら?」
美女はそう言うと、首を軽く横に倒し、誘うような目付きをした。
シェスターはうなずき、決然とした眼差しでもって言い放ったのだった。
「いいだろう。その招待を受けようではないか」




