第千三百八十七話 玄関扉の向こう側
シェスターたちは驚き、凄まじい勢いで振り向いた。
するとコメットの視線の先、ホテルの玄関扉の向こう側に、純白の艶やかなドレスを纏った絶世の美女が立っていたのであった。
「……あれか……あれが三人目の美女か……」
思わずシェスターがしわがれ声で呟いた。
するとアジオも緊張のためか、声をからして言った。
「……ええ、おそらくは……」
すると普段寡黙で鳴るバルトまでもが、息を殺すように呟いたのだった。
「……似ている……わたしが操られたあの青いドレスの女に……」
シェスターは反射的にバルトに問い質した。
「そうなのか?ならばコメット、君はどうだ?赤いドレスの女に似ているのか?」
するとコメットがうなずいた。
「はい。似ています。なのであの女性を見た瞬間、例の白いドレスの女なんじゃないかって思ったんです」
シェスターは、再び玄関扉の向こうで佇む、白いドレスの女を見据えながら言った。
「そうか……では三姉妹……ということなのかもしれないな」
するとアジオがすぐさま同意した。
「ええ、そもそも絶世の美女が三人ですからね。赤の他人と考えるより、姉妹と考えた方が自然でしょうね」
「そうだな。だが、だからといってどうということもないがな?」
シェスターが皮肉っぽく笑った。
「そうですね。姉妹だろうと、赤の他人だろうと、確かにどうでも良いかもしれませんね。重要なのは、この後我々がどう行動するかですが……どうします?」
アジオに振られ、シェスターが鼻で笑った。
「ふん。決まっている。行くぞ」
シェスターは言うや、何のためらいもなく歩き出した。
アジオは軽く溜息を吐くと、すかさずシェスターの後を追った。
さらにコメット、バルトと続き、四人はゆっくりとした足取りでもってホテルの玄関扉へと向かって行った。
そして扉に辿り着くや、シェスターは颯爽とした仕草でもって扉を開け放ち、勇躍と白いドレスの女に向かって近付いて行った。
白いドレスの女はその間、まったく微動だにせずシェスターたちを見つめながら待っていた。
そしてようやくシェスターたちが白いドレスの女の前に辿り着いた。
「ようやく会えたな。自己紹介をしたほうがいいかな?」
シェスターが挑戦的な物言いで話しかけた。
すると白いドレスの女が、右の口角を奇妙にゆっくりと上げて笑った。
「いいえ、自己紹介は結構よ。よく存じ上げているもの」
シェスターも右の口角をクイッと上げて、皮肉っぽく笑った。
「そうだろうな。それで、我々に何の用事があるのかな?」




