第千三百七十五話 八つの小部屋
「ではじっくり探すとするか」
シェスターが早速歩き始めながら言った。
アジオはすぐに追随し、シェスターと肩を並べて歩いた。
「結構な大きさですね?」
アジオが玄関入ってすぐに広がるたくさんの書架が立ち並ぶ、巨大な空間に少々たじろぎながら言った。
「そうだな。おそらくだが、図書館にする際に柱や壁をぶち抜いて作ったのだろう。部屋が小分けにあるよりも、大きな空間にまとめた方が機能的だろうからな」
「そうですね、本を探す際に楽でしょうし、管理する方もまたしかりでしょうしね」
「ああ、そういうことだ。だが地下への入り口があるとすれば、ここではないだろうな」
「ええ、それならば見つかりやすいですけどね」
「ああ、とりあえずここを突っ切ろう。この先にどうやら小部屋があるようだしな」
「ええ、そうしましょう」
二人はそこから無言で書架の間を早歩きですり抜け、あっという間に図書室の反対側へと移動した。
「結構部屋数ありますね?」
アジオが立ち並ぶドアの数を指で数えながら言った。
「ここから見えるだけで八部屋あります。このどれかですかね?」
「そうだな。まずは左端の部屋から見てみよう」
シェスターの意見にアジオが同調した。
「そうしましょう。出来れば一部屋目にあるといいんですけどね」
アジオが少々面倒くさげに言った。
シェスターは苦笑した。
「そうだな。それなら楽だが……さあ、どうだろうか」
シェスターはそう言いながら一番左の部屋のドアノブを回した。
そして何のためらいも無くドアを開けるや、すぐ目の前にあった地下への階段を見て、目を丸くした。
「……あったな?」
アジオもシェスターの背中越しに中を覗き、驚きの表情を浮かべた。
「……本当ですね。大当たりじゃないですか?」
「ああ。まあとりあえず入ってみよう」
シェスターはそう言ってすぐさま部屋の中へと入った。
アジオも続き、背中越しにドアを閉めた。
「……誰も居ないな。降りてみよう」
「ええ、そうしましょう」
二人は、地下への階段しかない小部屋に少々警戒しつつも、そこにとどまる理由も無い為、周囲を見回しながらも階段を降りていった。
「……ふむ……どうやら事務的な資料を置いている部屋のようだな」
シェスターが魔法で周囲を明るく照らし、部屋の中を見回して言った。
アジオも同様に魔法で隈無く部屋の中を照らして言った。
「……ですね。図書館ですから、利用者の資料とかを保管しているんでしょうかね?」
「ああ、そのようだが……まあその詮索はしまい。我々の目的はそれではないのでな」
シェスターはそう言うと、改めて床を明るく照らすのであった。




