第千三百五十七話 比較
「いやあ、喰った喰った」
ガイウスは膨れたお腹を右手でさすりながら、左手でもってアイスバームティーの残りを飲み干した。
すると同じ様なタイミングで食事を終えたカルラが、ガイウスに問うた。
「で、お前は当分解読にいそしむということだな?」
ガイウスは口をへの字に曲げながら、仕方なさそうにうなずいた。
「そうなるね。なにせあれを読める者は、俺の他にはいないしね」
「そうだな。では特訓は……午前中だけにしておこうか」
ガイウスはへの字に曲げた口をさらに大きく歪ませた。
「……やっぱやるのね……まあ予想してたけどさ」
「ふん、思いの外驚かないからつまらないね」
「そりゃそうでしょ。どう考えたってやるに決まってるし……でもさ……」
ガイウスが言い淀んだ為、思わずカルラが問いかけた。
「うん?どうした?」
「いや、ただタルカの町に行ったシェスターさんたちが気になるなと思ってね……」
するとカルラの顔が意地悪そうに歪んだ。
「本当か?そう言ってわたしをタルカの町へ追いやろうとか考えてないか?」
「いや、まあいなくなって欲しいとは正直思っているけどさ。シェスターさんたちが気になるのは本当だよ」
「ふん、馬鹿正直だね。まあいい。何が気になる?」
「……そうだなあ、やっぱりあの地下水路の怪物が、何故あの時あそこで俺を待ち構えていたのか……それに失踪したアルス、オルテスの二人とあの怪物は関係があるのかとか……色々だよね」
「ふむ……まあわたしも気にはなっているんだがな……」
「だよね。カルラがやられたあのダロス王宮の奴と、地下水路の怪物が同一のものなのかも気になるし……」
すると途端にカルラの顔が凶悪なものとなった。
「……ガイウス、お前は両方と出会っているはずだ。そのお前からして、どうなのだ?率直に言ってみな」
だがガイウスは渋い顔をして黙り込んだのだった。
「どうした?率直に言ってみろと言っている」
カルラが業を煮やして、改めて問うた。
するとようやくガイウスが重い口を開いたのだった。
「……いやあ、正直ダロス王宮の時は、疲れ果てていてよく覚えていないんだよね……それに地下水路の怪物も真っ暗闇の中だったし……比較しようにも、比較しきれないというか……なんというか……」
ガイウスはばつが悪そうな顔をして、黙り込んだ。
カルラは何度かうなずき、ガイウスに声を掛けた。
「確かにあの時、お前は疲労困憊だったな……ならば仕方がないか……」
「悪いね。ただ、正直あの雰囲気っていうのはそっくりだったと思うんだよね」
ガイウスは改めて記憶を辿り、二つの事件を思い起こすのであった。




