第千三百四十二話 知識の蓄積
「なんだとっ!?サタンになったと言うのか?」
カルラは大いに驚き、前のめりとなって問いかけた。
ガイウスは、厳しい表情で大きくうなずいた。
「ああ、そうなんだよ……今の今までルキフェルの名がルシファーと似ているとは思わなかったから、思いつかなかったんだけどさ……」
「……ならば、やはりそれは別物なのではないか?」
「う~ん、どうなんだろう……ところで、こっちの世界のサタンの前身はどうなの?」
「前身と言われてもな……わたしの知る限りサタンは初めからサタンだったと思うが……」
「そうか……前身は特にないのか……」
「いや、わたしも詳しい方ではないからな……本当はあるのかもしれないぞ」
「そうか、じゃあグレンに聞くのが一番かな?彼の知識は古文書だけではないし」
「そうだな。それがいいだろう」
「じゃあ、急ごうか?」
ガイウスが促すも、カルラは首を横に振った。
「いや、その前に……一つ聞きたいのだが……」
そう言いつつカルラが不可思議な表情を浮かべた。
ガイウスもつられたように不可思議な顔となった。
「……うん?何?」
カルラは考え込みつつ、問うた。
「……いや、お前にはあちらの世界の記憶があるんだよな?」
「いや、記憶があるわけじゃないよ。ただあちらの世界の知識だけはあるんだよ」
「そうか。記憶は無いのか……まあいい、で、お前はこれまでに何度も何十度もあちらの世界とこちらの世界を交互に転生してきたんだよな?」
「……そうだね」
「では問うが、お前のあちらの世界の知識というのは、何十回と転生した分も蓄積されていると考えていいのか?」
カルラの奇妙な問いに、ガイウスはさらに不可思議な表情となった。
「……どういうこと?……ああ、そうか。あちらの世界での知識が、何十回と及ぶ転生の結果、蓄積されているのかどうかってことか……」
ガイウスはそこで深く、深く考え込んだ。
そして結論を出した。
「……いや、たぶんだけど……前回の……今生の一つ前の生の知識だけじゃ無いかと思う」
ガイウスの答えに、カルラがうなずいた。
「なるほどな……ということはお前の前世を呼び出して聞けば、あちらの世界についての知識は、お前より深いかもしれないというわけだな?」
「ああ、そうかも……でもこれまで呼び出した前世の奴らで俺よりしっかりしてそうなのってアウグロスだけしかないよ?」
「そうだな。ならばそのアウグロスを呼び出せばいいではないか」
カルラはそう言うと、軽く顎をクイッと上げて、ガイウスに何やら指示をしたのだった。




