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第千三百三十四話 失踪

「えっ!?どういうこと?」


 ガイウスは驚き、思わず目の前のカリンに問い質した。


 カリンは怒りに眉尻をピンと跳ね上げて怒鳴った。


「知らないわよ!!わたしが戻ってきたときには、既にアスタロト様はお出かけになった後だったんだから!!」


 凄い剣幕のカリンに、ガイウスはたじろいだ。


 するとその後ろからカルラが穏やかな声音で、カリンに語り掛けた。


「カリン、ではアスタロトは確かに復活を遂げたものの、自らの足でアスタロト邸を出て行ったということか?」


 カリンはクルッと首を巡らし、傍らに控える従者のラップに問い質した。


「ラップ!そうよね?」


 ラップは恭しく頭を垂れて、お辞儀をしながら答えた。


「はい。アスタロト様は確かにお目覚めになられました。ですが、すぐにその足でお出かけになりました」


「ほら!だからわたしは知らないって言ったじゃない!わたしは!アスタロト様に!まだお目にかかっていないのよーーーーー!!!」


 カリンがたまりに溜まったストレスを全部吐き出すかのように言った。


 ガイウスは肩をすくめてカルラを見た。


「……何処行ったんだろう?」


 カルラも肩をすくめて返答した。


「……さあな。わたしに判るわけがない」


「……まあね。しかし……なんだろう?何か違和感があるな……ねえ、ラップ」


 ガイウスは難しい顔をしながらラップを呼んだ。


「はい。なんでございましょう」


「アスタロトの様子はどうだった?何かに操られているような……そんな感じはなかった?」


 ラップは即座に首を横に振った。


「いえ、そのようにおかしな様子は微塵もございませんでした」


「……そう。ドーブはどうかな?」


 今度はラップの横に控えていたドーブに尋ねた。


 だがドーブも大きく首を横に振るのだった。


「いや、俺もおかしな様子にはみえなかった。至って普通の……いや、俺はそうしょっちゅうアスタロト様にお会いしていたわけではないが……そんな俺の目にはいつものアスタロト様のように見えたぞ」


 ガイウスはさらに難しい顔となって、首をひねった。


「う~ん、そうか……じゃあルキフェル辺りに操られての行動って線はないか……」


 ガイウスの言葉にカリンが素早く反応した。


「ルキフェル!あの男の所為なの!?」


 ガイウスは慌てて両手を振って否定した。


「いやいやいやいや、今その線はないって言ったばっかりじゃん!何を聞いているのさ」


「あらそうなの?だったら最初からそう言いなさいよ」


「いやいやいやいや、だから最初から言ってんじゃん!その線はないってさ!」


 ガイウスは、アスタロトが失踪したことで半ば上の空となっているカリンに対し、イライラを募らせるのであった。

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