第千三百二十八話 解除
ガイウスの全身に、サタンの巨大な右拳が強烈に打ち込まれた。
「ぐぉっ!!!」
ガイウスは肺腑の中の空気と共に、吐瀉物を空気中にまき散らしながら吹き飛んだ。
そして航空機の軟着陸のように、地面に身体を何度もバウンドさせながら何十回と回転してようやく止まった。
「……ぐぅ……ぐほっ!……」
ガイウスは地面にうつ伏せになりながら、残りの吐瀉物を吐き出した。
するとそこへ、サタンの巨体が振ってきた。
ガイウスは全身をしこたま打ち付けた為、指一本動かせる状態では無かったが、魔力の方は問題がなかったため、遠ざかる意識をなんとか集中させて飛行魔法を発動させた。
「……くっ……」
すると間一髪、サタンの巨大な右足が振り下ろされる寸前に、ガイウスの身体はうつ伏せの姿勢のまま、横っ飛びに逃れたのであった。
そしてそのままソフトランディングさせ、ガイウスの身体は再び地面にうつ伏せの状態となったのであった。
「……うぅぅ……う……」
ガイウスは薄れゆく意識の中で何か言おうとするも、まったく言葉にならず、ただ呻き声を上げることしか出来なかった。
すると再びサタンが巨体を軽やかに動かし、上空からガイウス目掛けて襲いかかってきた。
ガイウスはまたも必死で意識を集中させ、なんとか逃れることに成功したものの、ほとんど虫の息といった様子であった。
(……まずい……あんなとんでもない物理攻撃じゃ、魔装鎧なんてまったく意味が無い……どうする?……このままじゃなぶり殺しだ……冗談じゃ無いぞ……どうしたらいいんだ?……)
ガイウスは心中で必死に思考を巡らそうとするも、打撃による衝撃で意識が薄れており、考えはまったくまとまらなかった。
するとまたもサタンの攻撃が。
ガイウスはすかさず飛行魔法を発動させて逃れるも、その様子はイタチごっこのようであった。
(……だめだ……このままじゃ、いずれ意識がなくなる……その前になんとかしないと……攻撃を……いや、それどころじゃない……まずは防御だ……だけど攻撃は最大の防御だって……いや、無理だ……そんなのこの状態じゃ無理だ……かといって防御に専念するったって……魔装鎧は役に立たないし……やっぱりここは魔装鎧を解除して、虹の鎧を…………いやいや、だめだ。それをしたらまた……でもそれしか……ないか……)
ガイウスは混濁する意識の中で、虹の鎧の使用を決めた。
そしてすぐさま魔装鎧を解除しようと試みた。
(……えっ?……だめ?……解除できない?……まさか解除できるほどの力も残ってないのか?……じゃあ……どうしようもないじゃん……)
ガイウスは全身の痛みと混濁した意識の中で、絶望を味わうのであった。




