第千三百二十三話 跳ね返す
ガイウスは地面に押さえつけられながらも、必死に耐えた。
だが次第に、意識が遠くなってきた。
「……やばい……このままじゃ……気絶しちまう……」
ガイウスは、圧に抗おうと必死に身体をうねらせた。
だがどれだけ力を振り絞ったところで、身じろぎ一つ出来なかった。
するとそこで、突然サタンがガイウスの心中へと念を送った。
「特異点よ、魔装鎧の使い方を考えてみよ」
その声は、ガイウスには天恵に聞こえた。
すぐさまガイウスは、魔装鎧に意識を集中した。
すると、ぼんやりとではあるものの、魔装鎧が反応したようにガイウスには思えた。
(……いけそうな気がする……どうも魔装鎧には意識のようなモノがあるように感じる……これはもしかして、サタンの分身か何かか?……)
ガイウスはしばし魔装鎧の正体について思考を巡らしたものの、ふとそんなことをしている場合ではないと思い出し、再び意識を魔装鎧に集中させるのであった。
すると、何やらコツのようなものを掴んだ気がした。
ガイウスは苦しみの中ながらも、喜色を表に表した。
(よし!いける……この圧を跳ね返せるぞ!)
そうガイウスが思った瞬間、その全身を押さえつけていた圧力がフッと消え失せた。
ガイウスは即座に全身に力を込め、勢いよく立ち上がろうとした。
すると、思いの外それは簡単に成し遂げられた。
「よし!出来た!」
驚いたのはカルラたちである。
「なんだとっ!?」
カルラはそれだけ言うと、しばし絶句した。
デルキアとカリンに至っては、唖然としすぎて端から言葉は一言を出なかった。
そのためかどうか、唯一なんとか口がきけるカルラが、代表するような形で言ったのだった。
「突然どういうことだ……これも魔装鎧の力ということか?……」
カルラのようやく絞り出したかのような問いに、ガイウスが軽やかに答えた。
「どうやらそのようだね。やっぱり凄いね、これ」
ガイウスの、また人を舐めたような物言いに、カルラが完全にブチ切れた。
「貴様は~!どうしてすぐにそういう言い方になるんだ!この馬鹿弟子が~!!」
カルラは怒りを力に変えて、さらに特大の光のシャワーを放った。
だが、ガイウスにはまったく効果が無かった。
「いやあ、そんなに怒らないでよ。まあ確かに、ちょっと調子に乗ったところはあったかもしれないけどさ」
ガイウスはカルラの怒りにさらに油を注ぐような物言いをした。
すると当のカルラではなく、ようやく口が聞けるようになったデルキアがぶち切れたのだった。
「てんめえ~!!ぶち殺す!!!」




