第千二百九十九話 鎧の出所
「……ふん、忙しいわけないだろ?ここからは一歩も動けないんだからな」
するとサタンがまたも軽く笑った。
「聞いていないのか?確かにお前の言うとおり、我の肉体はこの永久凍土の檻に捕らわれているが、我の目と耳は、自由に飛び回ることが出来るのだぞ?」
するとガイウスが眉根を寄せつつ、左斜め上を見上げて何かを思い出そうとした。
「……ああ、そう言えば確かにそんなことを言っていたような……」
するとサタンが、またも大きく哄笑した。
「聞いていたが、怒りに我を忘れて、そのことも忘れてしまっていたようだな?」
するとガイウスが軽く唇を噛みしめた。
「……だから子供なんだと言いたいようだな?……」
するとサタンが間髪を入れずに言い放った。
「そうだな」
ガイウスは悔しさに、先程よりも強く唇を噛みしめた。
「……ふん、俺はすでに自分が子供だってことを認めている。あんた、しつこいんだよ」
「そうかね?蒸し返したのは特異点……お前の方だったのじゃないか?」
するとガイウスがまたも眉根を寄せて左斜め上を見上げつつ、先程の会話を思い出そうとした。
「……そんなことはどうだっていい……」
ガイウスは、自分にとって都合の悪い記憶を思い出したため、すぐさま話しを切り替えようとした。
「そんなことより、さっきの話しだ!虹の鎧がどんなものだろうと、お前には関係ないだろうが!」
必死に話しを変えようとするガイウスに対し、サタンがほくそ笑みつつ言ったのだった。
「うまく話しをすり替えたな?特異点よ。だがまあいいだろう」
サタンは一旦言葉をそこで区切ると、軽く鼻で一笑いをし、話を続けた。
「虹の鎧か……お前のネーミングセンスはこの際どうでもいいことだが、その鎧の出所は本当にお前自身なのか?」
サタンは軽くガイウスをディスりつつも、事の本質をしっかりと問い質した。
するとガイウスはディスられた際は反射的に顔をしかめたものの、そのことは一瞬で忘れ、サタンの言葉を怪訝そうな表情で反芻するのであった。
「……鎧の出所?……そんなの俺自身に決まっているだろ?だって俺の身体からにじみ出てきたんだからさ……」
ガイウスはさも自信なさげに小さな声で呟くことした出来なかった。
するとサタンがまたも含み笑いをした。
ガイウスはまたぞろカチンときたものの、それを言ったらまた堂々巡りになると思い、グッと堪えた。
するとサタンが笑いを収めて静かに言ったのだった。
「……特異点よ。よく考えてみるがよい。その鎧の出所はおそらくお前では無いぞ?」
ガイウスは真剣な表情となって静かに考えた。
そして、やおら口を開くのであった。




