第千二百九十話 粉々
すると、カルラの合図にサタンがすかさず呼応した。
「承知。では参るぞ、特異点よ」
するとガイウスが本当に覚悟を決めたのか、それともまだそうでないのか、かなり微妙な表情でもって叫んだ。
「うおぉぉぉぉーーー!こうなったらやけくそだあぁぁぁぁーーー!来いやあぁぁぁぁーーー!」
ガイウスは震えながらも全身をくまなく異空間防御魔法で覆った。
だが次の瞬間、ガイウスだけでなく、カルラたちまで驚愕するようなことが起こった。
それは、ガイウス渾身の異空間防御魔法が、ガラスが割れるような乾いた甲高い音を立てて、粉々に砕け散ったのであった。
「マジ……か……」
ガイウスは一瞬呆然とした表情を浮かべたものの、すぐに気を取り直して異空間防御魔法を貼り直すよう試みた。
だがすぐにそれは、淡雪の如く脆くも消え去ったのであった。
するとサタンより無情の宣告が、ガイウスに下った。
「無駄だ」
だがガイウスは諦めが悪かった。
必死の思いで次々に異空間防御魔法を繰り出し、自らの周囲に展開させようとした。
だがそれはサタンの言うとおり、無駄な努力でしかなかった。
何故ならば、ガイウスが魔法を展開するや否や、間髪を入れずにそれは粉々に吹き飛んだからであった。
するとこの戦いを見守るデルキアが、溜息と共に呟いた。
「……どうやっているんだ、あれは?……」
デルキアの問いに、傍らのカリンが戸惑いの表情を浮かべながら答えた。
「……さあ、良くはわからないけど……凄いわね……」
するとカルラもまた驚きの表情でもってうなずいた。
「……うむ。原理は不明だが……あれをやられては、ガイウスは手も足も出ないな……」
すると、ガイウスのパニクった叫び声が聞こえてきた。
「やべえぇぇぇぇーーー!やべえって!どうすりゃいいって言うんだあぁぁぁぁーーー!防御できなきゃ、即死じゃんかよ!!」
だがカルラたちがこのガイウスの叫びに応じることはなかった。
そのためガイウスは、その後もただひたすら叫び続けることとなった。
「うわっ!!まずいって!!本当にやばいんだって!!次から次へとぶっ壊れていきやがるぞっ!!」
ガイウスの魔法総量は無尽蔵であったため、魔力が尽きる心配こそなかったものの、ガイウス自身の体力は別物であった。
「くそっ!くそっ!やべえ!疲れてきたっ!どうすりゃいい!?」
するとそこでガイウスが、ある考えを思いついた。
「そうだ!アウグロスを呼び出して聞いてみよう!」
だがすぐにガイウスは別のあることに気付き、立った今思いついた考えを取り下げざるを得なくなったのだった。




