第百二十七話 ナスリファイル
ガイウスたちがゆったりとした食事を終え、しばらくの間くつろいでいると、ナスリがはじけるような笑顔を浮かべて煉瓦亭へと飛び込んできた。
「お待たせいたしました!資料をまとめて持ってまいりました!」
だがそんなナスリの手には薄いファイルが一冊あるだけであった。
「えっ、それだけ?そうかやっぱり大して資料は残っていなかったか……」
ガイウスはそう言うと、少々落胆した表情を浮かべた。
するとナスリは、そんなガイウスに対してかなり憤慨した様子を見せた。
「お言葉ですがお坊ちゃま!それだけ、と今仰いましたが、これは全ての資料をわたしが情報処理をしてコンパクトにまとめ上げたものなのでございます!必要な情報だけを抜き取り、不要な情報を切り捨てたからこその、この薄さなのです!」
ナスリの剣幕にガイウスはたじたじとなった。
「あっ、い、いや、そうだよね。いや、ごめん……」
するとカルラがめずらしく横から助け舟を出した。
「まあそう怒りなさんな。どれ、ちょっと見せてもらおうかね」
ナスリは上気した顔つきのままカルラにファイルを手渡した。
カルラはファイルを受け取るとすぐさま開き、ペラペラと紙をめくって資料の中身をじっくりと精査した。
そして一通り読み終えるとファイルをすっと閉じて、ナスリを見据えた。
「ふむ。なるほどな。やはりナスリ、お前さんは優秀な男だったようだね。ここにはあたしらが欲する必要な情報が全て書いてあるようだ」
カルラはそう言うとガイウスにファイルを手渡した。
ガイウスもすぐさまファイルを開き、一枚一枚を大事に読んだ。
「……たしかに。どうやらあの病院に入院してから転院するまでのことがあらかた載っているみたいだけど……」
するとナスリが憤慨と得意げとが入り混じった表情となって言った。
「またもお言葉でございますが、お坊ちゃま。あらかた載っているみたいだ、ではありません。全部載っているのです!」
「あ、ああ、たびたびごめん。全部載っているね。全部」
「はい。バース村の生き残りがあの病院に入院してから、転院するまでの間のことは、ここに全部載っているのでございます」
するとカルラがさらに言葉を継いだ。
「それだけじゃあない。どこへ転院したかも載っているじゃないか」
ガイウスはファイルの最後に書かれてある転院先を見て、軽い眩暈を覚えた。
「うん、そうなんだ……だけどここは…………カルラ、どうしよう?」
ガイウスはだいぶ戸惑い気味にカルラへ問うた。
だがカルラはちょっと小首を傾げて一つ大きなため息を吐いただけでガイウスの問いには答えず、しばし考え込んでしまった。
そしてしばらくの時を経て、カルラがようやくと答えを出した。
「まっ、それについては追々考えることとしよう。それよりもまずは、この生き残りの病状について考察しようじゃないか」




