第千二百八十六話 勝手な想像
「これはガイウスに同感だな。あんな奴とこれ以上付き合ってられるか!」
デルキアが怒りを込めて言い捨てると、傍らのカリンも同じ様に言った。
「そうね。基本的に不愉快になるだけだものね。まあアスタロト様を治してくれるって言うし、そのことだけは感謝するけどね」
するとデルキアが混ぜっ返した。
「本当に治っているかどうか判らんぞ?あんな奴の言うことを真に受けるのか?」
するとカリンがすかさず反撃した。
「ふん!きっともう治っているわよ。ここでルキフェルが嘘を吐く意味なんてないじゃないの。あんたそんなことも判らないの?」
「なんだと!?」
「なによ!」
「誰が馬鹿だ!」
「そんなことわたしは一言も言ってないじゃないの!本当に何言ってんの!?ねえカルラ、あんたも治っていると思うでしょ?」
両者の言い合いの最中に突然振られ、カルラはばつの悪さを感じつつも、カリンの言い分に分があると思い、その旨を仕方なさそうに言うのであった。
「まあ、そうだな。治っているだろうな……」
するとカリンが勝ち誇ったように言った。
「ほら~聞いたわね?はい、この話しはわたしの勝ちで終わり!」
するとデルキアが、悔しそうに歯噛みしつつ、プイッと横を向いてしまった。
カリンは得意げに顎をクイッと上げて再び勝ち誇った。
カルラは軽く溜息を吐き、改めてサタンに向かって語り掛けるのであった。
「よもやの闖入者であった。ところであなたはアスタロトをあの様な状態に出来るのは、神しかいないと言っていた。だがルキフェルは自分ではないと言う。では犯人は別の神であろうか?あなたはどう思うかな?」
すると問われたサタンが、しばし考え込んだ。
「……そうだな。その可能性が高いと思うが……もしかすると違うのかもしれんな……」
サタンは何か含みを持たせるような物言いをした。
カルラがそのことに敏感に気付き、すかさず問いかけた。
「……心当たりがあるようだが?」
するとサタンが大きく哄笑を上げた。
「……さて、特段心当たりがあるわけではない。それはお前の思い過ごしというものだ」
だがカルラはしつこく食い下がった。
「いや、お見過ごしとは思えん。あなたは先程、間違いなく誰か特定の者を想定して言ったはずだ。違うか?」
するとサタンがすかさず思念を送った。
「違うな。だがルキフェルの言い草ではないが、勝手に想像したければするといい。それはお前の自由なのだからな……」
するとカルラがニコリと微笑み、うなずいたのだった。
「……そうか。ではそうさせてもらう。とは言っても、わたし自身にとっては単なる想像ではなく、確信していることだがな?」




