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第千二百八十二話 争いの理由

「うん?サタン、どうかしましたか?……我々にはそもそも敵対する理由がないのではないか?」


 ルキフェルが不思議そうにサタンに尋ねた。


 するとサタンがすかさず反駁した。


「ルキフェルよ。お前にとってはそうなのであろうな。だが我にとっては……そうではない」


 するとルキフェルが、眉根を寄せて怪訝な表情を作った。


「そうなのかい?これは……参ったな。どうにも思い出せないよ。わたしと君とが争わねばならない理由が……」


 するとサタンは、ルキフェルの言葉を予想していたかの如く、間髪入れずに言い放ったのだった。


「で、あろうな。お前という奴はそういう奴よ。我らが争った理由も、何もかもどうでもよいのだ、お前は」


 するとルキフェルが少々心外だと言わんばかりの表情となったものの、すぐに元通りの仄かな笑顔となった。


「……たしかにあまり関心が無いかもしれないね……そうか、君にはわたしと争う理由があったんだね?」


 するとサタンが笑いを含みながらも、少々怒りのトーンも入った微妙な声音でもって言った。


「ああ、我にはたしかにお前と争う理由がある。故に我はお前に与しない。下に付くなどというのは、もっての外ということになる」


 するとルキフェルが至極残念そうな顔を作った。


「……そうか、それは残念だった。でも仕方がないか。諦めるとしよう」


 とてもではないが残念そうには見えない笑みを浮かべて、ルキフェルが言った。


 するとその顔を見たガイウスが、吐き捨てるように言ったのだった。


「本当は何とも思ってないくせに……なんて嫌な奴なんだ」


 するとルキフェルが、ガイウスの存在を忘れていたといわんばかりの笑顔を浮かべて向き直った。


「やあガイウス、やはり相当に君はわたしのことを嫌っているんだね?」


 するとガイウスが鼻息を一つフンと鳴らした。


「だからさっきからそうだと言っているだろ?俺は本当にお前のことが大嫌いなんだよ!」


 ガイウスの怒りのこもった発言ではあったが、ルキフェルの顔に貼り付いた笑みを剥がすことは出来なかった。


 ルキフェルの表情は、もはや能面のように変わらず、笑みをその美しい顔の上にひたすら貼り続けるのであった。


 ガイウスはそのことに心底腹を立てたものの、何を言ったところでルキフェルの表情が変わることはないと思い、じっと押し黙るのであった。


 すると辺りをしばし沈黙が覆った。


 するとカルラがその沈黙の間隙を縫う様に、ルキフェルに向かって問いかけたのであった。


「ではルキフェル、わたしからもう一つ質問がしたい。聞いてもらえるか?」

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