第千二百七十五話 会話
すると、今度は再びガイウスの青年らしい高い音程の声色がした。
「ちょっと待ってくれ。何か……凄い変な感じなんですけど……」
するとまたもガイウスの口から壮年の男の声がした。
「そうだな。わたしも同感だ」
「いやいやいやいや、急に出て来られても……ていうか俺と話せるの?」
するとすかさずアウグロスの声が響いた。
「ああ。どうやらそのようだな」
「マジかよ……何か気持ち悪いんだけど……まあいいか……」
すると苦笑交じりのアウグロスの声が響いた。
「認めてくれてありがたい。わたしも出来ればこのように、表面に出たいのでな」
「表面?……ああ、こういう風にしゃべられるようにってことか」
「そうだ。わたしはずっと君の深層意識の底に眠っていたのでね。たまにはこうして、誰かとしゃべりたいと思うのさ」
「ああ、まあそうだろうね。そりゃあ寂しいだろうし……あ、ちょっと待って。他の連中とは深層意識の中で会話したり、コミュニケーションを取ったりって出来ないの?」
すると間髪を入れずにアウグロスが答えた。
「出来ないな」
「ふ~ん……なあルキフェル、俺は他の連中とも自由に話せるのか?」
するとルキフェルがすぐに答えた。
「ああ、君の自由に話すといい」
「わかった。とはいっても他の連中とは特に話したいとは思わないんだけどね。で、アウグロスの言うとおり、彼らは俺の中で会話は出来ないのか?」
「さあ、それはわたしには判らないな。だがアウグロスが出来ないと言うのならば、そうなのではないかな」
ルキフェルの素っ気ない対応に、ガイウスがまたも鼻白んだ。
「何だよそれは。判んないのかよ?」
するとルキフェルが苦笑した。
「判らないよ。わたしもさすがに全てを見通せるというわけではないのでね」
「ふ~ん、まあいいや。だそうだよ、アウグロス」
すると再びアウグロスの壮年の男の声が響いた。
「そうか。よく判った」
「てことは、ずーっと暇だね?」
「いや、そうでもない。常に意識があるわけではないのでな」
「ああ、そうなのか。だから中では会話が出来ないのかな?」
「かもしれんな」
「まあそういうことなら、ちょくちょく呼び出すよ。結構この形、面白くなってきたし」
「そうか。それはありがたい」
するとそこでガイウスが改めてルキフェルと向き直った。
「さてと……で、俺をアウグロスと会話させてどうしようっていうつもりなんだ?ルキフェル」
ガイウスはそうして、今もなお笑みを浮かべ続けるルキフェルに対して、挑むように言ったのであった。




