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第千二百七十四話 呼び出し

「……ルキフェル……」


 するとルキフェルが満面の笑みをその美しい顔に浮かべた。


「やあ、ガイウス。久し振りだね」


 ルキフェルはとても優しい声音でもってガイウスに語りかけた。


 だが対するガイウスの方はといえば、ルキフェルとは対照的にかなり棘のある声音であった。


「……久し振りっていやあ、久し振りだけどね……ま、出来れば俺は二度と会いたくないと思っていたんだけどね……」


 するとルキフェルが笑顔はそのままに、苦笑混じりに言った。


「つれないことを言うじゃないか、ガイウス。わたしは悲しいよ」


 するとガイウスが吐き捨てるように言った。


「何が悲しいだよ。そんな台詞、満面の笑みで言うことか?心にもないことばっかり言いやがって……」


 するとルキフェルが、大層愉快そうな笑い声を上げた。


「ひどいな。わたしは本心から悲しんでいるんだよ?それなのに、判ってくれなくてとても残念だよ」


 ルキフェルは変わらずの笑顔でもって淀みなく言った。


 すると、その胡散臭さにガイウスの表情が鼻白んだ。


「……あっそ……それで俺に何か用なの?ていうか、俺を痙攣させたのってルキフェル、あんただよね?何でそういうことするかなあ~?」


 するとルキフェルがさらに口角を上げて、悪魔的な微笑となった。


「君のためだよ。ガイウス」


 ガイウスは片方の口角だけをクイッと上げて、皮肉な笑みを浮かべた。


「俺のため?へえ~本当かねえ~?俺を痙攣させて、俺に何の得があるって言うんだ?ルキフェル」


 ガイウスのかなり棘のある言い方であったが、ルキフェルは一向に気にする様子はなかった。


「アウグロスを呼び出してみるといい。出てくるはずだ」


 このルキフェルの発言には、ガイウスのみならず皆が驚いた。


 中でもカルラが最も早く反応した。


「アウグロスを!?自由に呼び出せるようになったと言うことか?よし、ガイウス!やってみろ!」


 カルラの鋭い命令に、ガイウスが渋々従った。


「……わかったよ。やってみるけどさ…………え~と~……アウグロス、いるかい?……」


 するとガイウスの身体がビクリと大きく反応した。


 そして怪訝な表情を浮かべると、彼の意思とは反するように口が動いた。


「……ああ、いる……」


 その声は、それまでのガイウスの声とは異なり、かなり低い壮年を思わせるような声色であった。


 カルラは大いに驚き、ルキフェルにすかさず尋ねた。


「これはつまり、今後はガイウスの自由意志によってアウグロスたちを呼び出せるようになったと言うことか?」


 するとルキフェルはうなずくことで、カルラの考えを肯定したのだった。

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